2025年6月1日から、職場における熱中症対策が法律で義務化されました。 夏の労務管理において、企業はこれまで以上に一層の注意と具体的な対策が求められます。
もし、定められた対策が不十分と見なされた場合、事業者には6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
「うちの会社は正しく対応できているだろうか?」 「具体的に何から手をつければ良いのだろう?」
この記事では、そうお考えの企業の総務・労務担当者様や、現場の管理者様に向けて、今回の「熱中症対策義務化」で押さえておくべき重要なポイントを、図解を交えながら分かりやすく解説します。
近年、夏の猛暑で職場の熱中症による労働災害が増加し、厚生労働省発表では、令和6年に休業4日以上の死傷者が過去最多1,257人、死亡者も3年連続30人超と極めて深刻です。このため、労働者の安全と健康を守るべく法的対策強化が決定されました。
熱中症対策の義務化は、単に法律を守るということだけではありません。
- 従業員の健康と安全の確保: 何よりも大切な従業員の命と健康を守ることに直結します。
- 「選ばれる企業」へのステップアップ: 安全衛生への積極的な取り組みは、従業員満足度の向上はもちろん、求職者に対する大きな魅力となり、人材獲得競争において有利に働きます。
- 「3K」イメージの払拭: 特に建設業などで課題とされる「きつい、汚い、危険」といったイメージを改善し、働きやすい環境づくりに繋がります。
- コンプライアンス遵守と企業リスクの低減: 法令を遵守することで、万が一の事故発生時の企業リスクを低減し、社会的信用を維持します。
今回の「義務化」、どの法律が変わったの?
今回の熱中症対策の義務化は、「労働安全衛生規則」の一部改正によるものです。
この改正により、事業者は熱中症を予防し、万が一発生した場合に適切に対応するための具体的な措置を講じることが明確に義務付けられました。
【重要】熱中症対策義務化の内容:担当者が具体的にやるべきこと
今回の義務化で、企業の担当者様が主体となって進めるべき主な対策は、以下の3つです。
ポイント1:まずは正確な現状把握から!WBGTの正しい計測が対策の第一歩
今回の義務化で基準となるWBGT(湿球黒球温度)は、気温・湿度に加え、地面からの照り返しといった輻射熱も考慮した、実態に近い暑さの指標です。従来の温度計ではリスク評価が不十分なため、輻射熱を計測する「黒球」付きの専用測定器で法定基準を正確に把握することが、対策の第一歩となります。
ポイント2:熱中症発生時の「報告体制」を整備し、周知すること
対象となる作業は?
湿球黒球温度(WBGT)が28度以上または気温が31度以上の「暑熱な場所」 において、継続して1時間以上、または1日あたり4時間を超えて行われる作業など、「熱中症を生ずるおそれのある作業」が対象となります。
周知すべきは誰まで?作業場所の「全員」(請負業者含む)が対象
- 実際に作業を行う労働者だけでなく、同じ場所で作業に関わる全ての人(請負業者の作業員なども含む)が対象です。
「熱中症の早期発見!『報告体制』の具体的な整備方法と運用ポイント」
- 作業者が熱中症の自覚症状を感じた場合や、他の作業者に熱中症の疑いがあることを発見した場合に、その旨を速やかに報告させるための体制を整備します。
- 具体的には、報告を受ける責任者(氏名・連絡先)、報告の方法(電話、無線など)を明確に定め、作業開始前に周知徹底する必要があります。
- また、責任者による作業場所の巡視、2人以上の作業者が互いの健康状態を確認し合う「バディ制」の導入、ウェアラブルデバイスを用いた作業者のリスク管理(他の方法との組み合わせ推奨)なども、早期発見の観点から有効な手段として挙げられています。
ポイント3:熱中症発生時の「措置手順」を作成し、周知すること
その時どうする?現場で役立つ措置手順の作り方
- 作業場ごとに、実際に熱中症の疑いがある作業者が発生した場合に備え、具体的な措置の内容とその実施手順をあらかじめ定めます。
- 措置内容には、作業から速やかに離脱させること、身体を冷却するための具体的な方法(例:涼しい場所への移動、衣服を緩める、濡れタオルで冷やす、アイススラリーの摂取など )、必要に応じた医師の診察や救急搬送の手配などが含まれます。
- これらの手順と合わせて、緊急連絡網(医療機関の連絡先・所在地を含む)も整備し、関係作業者に周知することが求められます。 体調が急変した場合の対応(例:本人や家族による救急搬送要請、事業者からのフォローアップ連絡)についても、あらかじめ定めておくことが重要です。
もし対策を怠ったら…?~義務化の重みと罰則リスク~
今回の改正で新設された労働安全衛生規則第612条の2は、労働安全衛生法第22条に基づくものであり、事業者に課される法的な措置義務です。
対策を怠った場合、労働基準監督署による指導の対象となる可能性があります。また、万が一、熱中症による労働災害が発生してしまった場合、安全配慮義務違反として企業が法的責任を問われ、罰則が科されることもあり得ます(労働安全衛生法には関連する罰則規定が存在します)。 それだけでなく、従業員からの信頼を失い、企業の社会的評価が低下するリスクも伴います。
特に、建設現場のように複数の事業者が混在して作業を行う場合、元方事業者だけでなく、関係する全ての請負事業者に措置義務が生じ、違反があった場合は全ての関係事業者が処罰の対象となる点に注意が必要です。
【次回予告】熱中症リスクに備える!WBGT値の理解・実践策・最新ツール
今回は、まず「熱中症対策の義務化」の概要と、企業が最低限取り組むべき重要なポイントについてお伝えしました。
しかし、「”暑熱な場所”の基準WBGT値はどう測るの?」「具体的な対策や便利なサポート商品は?」といった疑問もあるかと存じます。 次回の解決ファクトリー通信では、今回の義務化に深く関わる暑さ指数「WBGT」の詳細解説、より具体的な熱中症予防策、そして弊社が自信をもっておすすめする最新対策商品を詳しくご紹介。ご期待ください!
従業員の安全安心な業務環境整備は、企業の持続的発展に不可欠な投資です。 法改正を機に、貴社の熱中症対策を再確認し万全の体制で夏を迎えるため、弊社もサポートできれば幸いです。 ご不明な点や対策のご相談は、お気軽に弊社までお問い合わせください。
【コスト削減】夏の熱中症対策に「レンタル」が最適な理由
「スポットクーラーなど、対策グッズを揃えるのはコストがかかる…」 「夏の間しか使わないのに、購入して保管するのは非効率…」
このようなお悩みには、「使いたいときだけ利用できるレンタル」が最適です。熱中症対策のように、必要な期間が夏場に集中するニーズと、レンタルの仕組みは非常に相性が良いのです。
<レンタル活用 3つのメリット>
- 初期コストの削減: 購入に比べて初期費用を大幅に抑えられます。
- 保管・管理が不要: シーズンオフの保管場所に悩む必要がなく、メンテナンスの手間もかかりません。
- 最新機種を利用可能: モデル変更があった場合でも最新の対策グッズを利用できます。
法改正を機に、貴社の熱中症対策を万全の体制で迎えるため、弊社もサポートできれば幸いです。