工場の安全を守る! 初めてのセキュリティガイドライン

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日本の工場では、デジタル技術を活用した生産性向上や効率化(DX化)が進む一方で、IoTやクラウドの利用が増え、新たなセキュリティリスクが拡大しています。不正アクセスやサイバー攻撃により、製造ラインの停止や情報漏洩が現実の問題となっています。特に、製造業では古い設備と最新技術が混在し、段階的な対策が必要です。

これらのリスクに対応し、安全性や生産性を確保するための手引きとして、2022年11月1に経産省より工場セキュリティガイドラインが策定されました 。

本記事では、工場が狙われる理由やリスク、セキュリティガイドラインの内容と具体的な方法を分かりやすく解説します。

出典:「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン Ver1.0
「工場システムにおけるサイバー・フィジカル・セキュリティ対策ガイドライン Ver1.0【別冊:スマート化を進める上でのポイント】」
産業サイバーセキュリティ研究会 ワーキンググループ1(制度・技術・標準化) 工場サブワーキンググループ

なぜ工場が狙われる?理由とリスク

日本の製造業は、精密機械や半導体、医療機器など、高品質で高付加価値な製品を生産したり、自動車や電子機器など国内外で重要な経済的基盤となる産業を担っています。攻撃者は工場内で使用される製造技術やノウハウ、製品設計データなどを盗むことで、不正な利益を得たり、身代金要求(ランサムウェア)や企業ブランドの信用失墜を目的に攻撃を仕掛けます。攻撃を受けた場合に発生するリスクをご紹介します。

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サイバー攻撃による生産停止

工場の制御システムが不正アクセスやマルウェア攻撃を受けると、生産ラインが停止するリスクがあります。生産停止は納期の遅延や顧客対応の問題を引き起こし、事業全体の信頼を損なう可能性があります。特に、工場ではネットワーク化が進んでおり、攻撃が一部の機器から全体に広がることも懸念されます。このため、ファイアウォールや侵入検知システムの導入、アクセス権の厳格な管理など、システムの可用性を維持するための対策が不可欠です 。

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機密データの漏洩

工場では、生産計画やレシピ、製品のトレーサビリティ情報など、機密性の高いデータが日々生成・管理されています。これらの情報が外部に漏洩すると、競合他社による技術の盗用や、顧客データの流出による信頼低下が懸念されます。特に、サプライチェーン全体が接続される中で、パートナー企業経由で情報が漏れるリスクもあります。データ暗号化やアクセス制御、ネットワーク監視の強化などで、このリスクを低減することが求められます 。

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古い設備に対する攻撃

多くの工場では、最新技術と古い設備が混在しており、古い制御システムはセキュリティ更新が難しく、攻撃者にとって容易なターゲットとなります。これにより、制御の乗っ取りや異常動作が発生し、製品の品質低下や作業員の安全リスクが生じます。古い設備への段階的なセキュリティアップデートや、ネットワークからの分離、継続的な監視体制を導入することで、こうしたリスクを最小限に抑えることが可能です 。

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セキュリティガイドラインで示された基本対策とは?

セキュリティガイドラインでは、生産ラインの安全性を守ることを目的に、どの業種にも共通する基本的な対策を示しています。その中でも「ゾーニング」と「リスク評価」を重視。ゾーニングとは、生産現場や管理ゾーンを明確に分け、それぞれに適切なセキュリティを施す方法で、例えば、生産ラインを操作するゾーンには厳重なアクセス制限を設ける必要があります。リスク評価では、特に重要な設備やデータを優先して守ることが求められます。

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今すぐできる実践的な5ステップ!

では実際に工場の安全を守るには、どうしたらいいのか?本章ではガイドラインに基づいた実践的な5ステップをご紹介します。「ゾーンニング」や「リスク評価」を組み込んだこの5ステップを順に実行すれば、ガイドラインに沿った工場セキュリティ対策を実践でき、サイバー攻撃や不正アクセスのリスクを減少させることができます。

①現場のリスクを洗い出す

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②重要な設備とデータを特定

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③対策を計画する

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④実施と効果検証

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⑤定期的な見直し(PDCAサイクル)

①現場のリスクを洗い出す

まずは工場内で発生する可能性のあるリスクを明確にします。サイバー攻撃だけでなく、機械の誤作動や人的ミスも含め、あらゆるシナリオを想定することが重要です。

例えば、ネットワークを通じて外部から生産ラインが停止されるリスクや、データの不正利用が挙げられます。ガイドラインでは、リスクを体系的に整理する方法を提示しており、リスク洗い出しの際には、全関係者が参加することを推奨しています。

<< 工場のスマート化におけるセキュリティリスクの例 >>

考慮が必要な事項セキュリティリスク


ラインや設備の高度化・柔軟性の確保
装置内に計算機を内蔵

計算機と同等のリスクあり
無線LAN、5Gの通信機能の利用外部ネットワーク接続のリスク拡大


制御システムと情報システムの連携
制御システムと情報システムのネットワークが接続制御システムと情報システムの間のセキュリティ対策に差異による相互リスク拡大
制御システムのデータが情報のシステムに存在システム利用者の管理が異なることによる、データ改ざん/漏洩リスク拡大


遠隔での利用
外部ネットワークを介した接続外部ネットワークからの攻撃
外部にある機器の利用利用機器の管理や利用者管理が不十分であることによるリスク


外部システムとの連携
外部システムと異なるセキュリティポリシー許容リスクが異なることによるサイバー攻撃の可能性
サイバー攻撃の影響範囲の拡大インシデント対応の際の円滑な連携が困難、責任範囲が不明確

②重要な設備とデータを特定

次に、どの設備やデータが工場の運営にとって最も重要かを見極めます。生産に直結する機器や、製造に関わるノウハウ、顧客情報などが含まれます。これらの資産を保護するために優先的に対策を講じる必要があるため、特に重要な設備やデータをリストアップし、セキュリティの強化が必要な範囲を絞り込みます。

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③対策を計画する

洗い出したリスクと特定した重要設備に基づき、具体的な対策を立てます。例えば、ゾーニング(エリアごとにセキュリティレベルを設定)、アクセス制御、ネットワーク監視などが挙げられます。対策を立てる際には、設備の稼働に影響を与えないバランスが必要です。さらに、経営層への説明や予算の確保も計画段階で重要な要素となります。

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④実施と効果検証

計画した対策を現場で実行し、その効果を確認します。たとえば、新しいファイアウォールを設置した場合、実際に攻撃を防げるかテストを行う必要があります。また、従業員向けのセキュリティ教育も重要です。全員がルールを守らなければ、対策は十分に機能しません。ガイドラインでは、実施後のモニタリングと継続的な改善の必要性を強調しています。

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⑤定期的な見直し(PDCAサイクル)

セキュリティ対策は一度で完了するものではありません。業界の技術進展や新たなサイバー攻撃の手法に合わせて、定期的に見直しを行うことが重要です。PDCAサイクル(計画→実施→検証→改善)を回し、繰り返すことで工場のセキュリティを継続的に強化していきます。

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実践例から学ぶ対策方法

事例1:入退室管理対策

ある電子機器工場では、入退室管理が不十分で、関係のない人が生産エリアに入り込むリスクがありました。ガイドラインでは、顔認証や指紋認証を導入し、特定の社員だけが入れる仕組みを推奨しています。この取り組みの結果、不正侵入のリスクを大幅に減らすことに成功しました。

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入退室管理対策をするなら、入退室管理システム「Akerun Pro」がおすすめです。

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事例2:情報漏洩防止の鍵管理対策

ある工場では、外部業者が保守作業を行う際に、鍵を自由に使える状態になっていました。この管理不足を悪用して、サイバー攻撃の足がかりとしてシステムに侵入されたり、重要なデータが盗まれるリスクがありました。ガイドラインでは、鍵自体の利用者を制限し、利用履歴を記録・管理することを推奨しています。この仕組みを取り入れることで、鍵の利用者が明確になり、侵入者対策や不正アクセスの防止へとつながりました。

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情報漏洩防止の鍵管理対策をするなら、クラウド型鍵管理システム「スマートキーボックス」がおすすめです。

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事例3:サプライチェーン経由攻撃への対策

電子部品を供給する工場で、取引先のネットワークからマルウェアが侵入し、一時生産停止に追い込まれる事例がありました。このケースでは、サプライチェーン全体でのセキュリティ管理の必要性が浮き彫りになりました。ガイドラインでは、取引先に対するセキュリティ要件の明確化や、データ交換時の暗号化を行うことが示されています。結果として、同じ経路からの攻撃を防ぐ対策が構築されました。

事例4:従業員の操作ミスによる情報漏洩への対策

精密機械工場では、従業員が誤って機密データを外部に送信したことで、顧客情報が漏洩するトラブルが発生しました。この事例では、従業員教育の不足が原因の一つでした。ガイドラインでは、定期的なセキュリティ教育や、データの外部送信を制限するシステム(DLP: Data Loss Prevention)の導入を推奨しています。これにより、誤操作を未然に防ぐ仕組みが整備されました。

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未来に向けた安全な工場へ、今すぐ始めるセキュリティ対策!

ガイドラインの導入により、攻撃を未然に防ぐ成功事例が増えています。特に、セキュリティ対策を進めた工場では、生産性の向上やコスト削減といった副次的効果も報告されています。今後は、AIやIoTを活用した「スマート工場」の進化が期待されていますが、セキュリティは引き続き重要な課題です。
セキュリティ対策は難しいことではなく、小さなステップから始められます。まずは、現状を見直し、取り組みやすい対策から導入してみましょう。

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