3分でわかる!カーボンニュートラルの意味と企業の取り組み方

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2020年10月に菅政権が「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表して以来、メディアなどで「カーボンニュートラル」という言葉を見聞きする機会が増え、各方面でCO2削減への取組みも加速しています。

事業者にとってますます重要な課題となって来るカーボンニュートラルですが、その言葉の意味や必要性について認識し、従業員など他者に正しく伝えられるという人は、そう多くはありません。

この記事では「カーボンニュートラル」について、わかりやすく解説しますので、ぜひ参考になさってください。

「カーボンニュートラル」とは?

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを指しています。

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出典・環境省ホームページ 

大気中のCO2(二酸化炭素)をはじめ、N2O(一酸化二窒素)、メタンなどのガスは太陽からの熱を地球に封じ込め、地表を暖める働きがあります。
これらのガスを「温室効果ガス」と言い、火力発電による化石燃料の燃焼をはじめ、自動車や航空機の利用、家畜のゲップなど、様々な経済活動・日常生活に伴い常に排出されています。

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出典:全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

この温室効果ガスが増えることにより、地球温暖化が進んでしまうため、排出量を削減する必要があるわけです。しかし、実際には完全にゼロにすることは物理的に困難です。

そこで、削減が難しい排出分を、代替え策※を使って実質ゼロを目指すという考え方が、「カーボンニュートラル」なのです。
※植林を進めることで光合成に使われる大気中のCO2の吸収量を増やしたり、人為的な技術を使って除去するなど。

カーボンニュートラルと似た言葉で「カーボンオフセット」がありますが、このふたつには違いがあります。

カーボンオフセットとは?

環境省のホームページによると「カーボンオフセット」とは以下のとおりです。

市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、クレジットを購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせることをいう。
引用:環境省ホームページ「カーボン・オフセット制度」

つまり、「カーボンオフセット」は埋め合わせをするという考え方で、この仕組みに頼ってしまうと本質的な削減が停滞してしまいます。
そこでカーボンオフセットを深化させた取り組みとして、実質的に均衡にすると言う考え方のカーボンニュートラルという概念が位置づけられるようになりました。

脱炭素とカーボンニュートラルの違い

脱炭素は場合によって「完全に炭素(CO2)を除く」という意味も含みますが、脱炭素化を目指す事はできても、完全に炭素を取り除く事は困難です。
一方で、カーボンニュートラルの方は「中立にする/差し引きゼロにする」という意味で、実現可能な目標です。
わかりやすく伝えるために、日本では脱炭素化=カーボンニュートラルの意味合いで使われることもあります。

いま「カーボンニュートラル」が必要な理由

カーボンニュートラル推進の理由は、ズバリ地球温暖化の抑制です。
世界の平均気温は2020年時点で、工業化以前(1850~1900年)と比べ、既に約1.1℃上昇したことが示されています。この「1.1℃の気温上昇」が、海面上昇を招き陸地を水没させ、気候変動を招いて、世界各地で異常気象を発生させています。
このまま地球温暖化が続けば、更なる気候変動が気象災害を招き、私たち人類や全ての生き物にとっての生存基盤を揺るがす「気候危機」となります。地球温暖化は全ての国の共通の問題であり、「カーボンニュートラル」は全人類が取り組まなければならない最優先課題なのです。

日本の異常気象による2020年度の経済損失額は、約1兆円にも上っています。
環境省では、気候危機を回避するため、いまからカーボンニュートラルに取り組む必要があることを、企業、自治体、個人に向けて、強く訴えています。

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出典・環境省ホームページ

image5 1出典・環境省ホームページ

「カーボンニュートラル」達成に向けた動き

2021年4月現在、125カ国・1地域が、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを表明しています。
日本も表明国のひとつであり、地球温暖化対策と経済成長の両立を目指しています。

世界の動き

京都議定書の後継となる温室効果ガス削減に関する世界的な枠組みとして、2015年に世界全体を巻き込んで採択されたパリ協定により定められた目標があります。

  • 世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分に低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
  • できる限り早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとる

温室効果ガスの削減は公平性と実効性の元に先進国、後進国ともに取り組まなければならない課題として、世界が共通の目標を持って動いています。

具体的な目標として、世界の二酸化炭素排出量の1/4を占める中国は2030年までに2005年比でGDPあたりの二酸化炭素排出を60〜65%削減、排出シェア第2位のアメリカは2025年までに2005年比26〜28%の削減を掲げています。

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出典:経済産業省ホームページ

日本の動き

日本では、2050年カーボンニュートラルの実現、また、2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指し、さらに、50%の高みに向け挑戦し続けるために、様々な取り組みや検討が行われています。

現在、日本では、年間で12億トンを超える温室効果ガスを排出していますが、2050年までに、これを実質ゼロにする必要があります。
環境省では、このカーボンニュートラルへの挑戦が、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想で、日本全体で取り組んでいくことが重要だとしています。
その上で、新たな地域の創造や国民のライフスタイルの転換など、カーボンニュートラルに向けた需要創出の観点に力を入れながら、政府が取組を推進しています。

■ 地域脱炭素ロードマップの作成
地域課題を解決し、地方創生に資する脱炭素に国全体で取り組み、さらに世界へと広げるために、特に2030年までに集中して行う取組・施策を中心に、地域の成長戦略ともなる地域脱炭素の行程と具体策を示しています。

■ 改正地球温暖化対策推進法 成立
2050年までのカーボンニュートラルの実現を法律に明記することで、政策の継続性・予見性を高め、脱炭素に向けた取組・投資やイノベーションを加速させるとともに、地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取組や企業の脱炭素経営の促進を図る「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」を、2021年3月2日に閣議決定し、国会に提出、2021年5月26日に成立しました。

■ 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略
「経済と環境の好循環」を作っていく産業政策を策定しました。
グリーン成長戦略は、成長が期待される産業(14分野)において高い目標を設定し、あらゆる政策を総動員します。

■ ゼロカーボンシティの表明から実現へ
脱炭素に取り組む地方公共団体を支援しています。

■ 脱炭素経営への取組
企業による脱炭素経営の取組を促進しています

この他にも、脱炭素事業への新たな出資制度の検討をはじめ、様々な取り組みが進められています。

引用:環境省ホームページ

製造業におけるカーボンニュートラルへの取り組み

カーボンニュートラルを達成するために、温室効果ガスの排出量を削減し、森林管理によって吸収量を上げる取り組みなどが行われています。
CO2を排出することの多い工場(製造業)では、カーボンニュートラル達成に向けて、何にどのように取り組むかが今後の大きな課題となってきます。
ここでは、取り組みの方法についてご紹介します。

エネルギー起源のCO2を削減する

2018年には温室効果ガス全体の約8割強を「エネルギー起源のCO2」が占めていました。
カーボンニュートラル実現には、まずエネルギーを活用した際に排出するCO2を削減することが必要不可欠です。

省エネルギーに能動的に取り組む

温室効果ガス削減の取り組みとして、単にエネルギーを節約するだけではなく、照明を蛍光灯からLEDへ変更したり、流量調整方法をバルブからインバーターへ変更したりするなど、積極的な実践が有効です。
また、再生可能エネルギーの活用も有効な省エネのひとつです。
当サイトでは、工場や製造業などの省エネ対策についてもわかりやすく解説しています。

2023年施行迫る! 省エネ法の改正ポイントと対策方法
工場の省エネ対策はこんな風に考える!実践方法も紹介!

スマートファクトリーの導入

スマートファクトリー化による自動化によって、生産性向上が実現すると、稼働の削減につながり、無駄なエネルギーの排出が無くなります。

ここまで、カーボンニュートラルの意味と、世界と日本の動きや取り組みについてお話ししてきました。
世界的な課題として、今後ますます重要になってくる「カーボンニュートラル」。
事業を推進する上でも、避けては通れない問題でもあることから、基本的な概念を理解して、国や世界の動き、また業界の取り組みなどに敏感になっておく必要があるでしょう。

まとめ
・カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることである。
・温室効果ガスとは、大気中のCO2、N2O、メタンなどのガスで、過剰な排出が地球温暖化の原因である。
・地球温暖化の抑制し、全ての生命の基盤を守るために「カーボンニュートラル」を達成しなければならない。
・125カ国・1地域が、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを表明している(2021年4月現在)。
・日本では、2050年カーボンニュートラルの実現、2030年度には温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指している。
・CO2を排出量が多い工場(製造業)では、カーボンニュートラルへの積極的な取り組みが必要不可欠である。