どこからが飲酒運転になる? 違反点数や罰金・罰則をわかりやすく解説!

drunk driving

飲酒運転は、「極めて悪質・危険な犯罪」として、飲酒をして運転をした人だけでなく、運転をさせた人にも厳しい罰則が設けられています。平成19年の飲酒運転厳罰化・平成21年の行政処分強化などにより、飲酒運転による交通事故は減少傾向にあるものの、いまだ根絶には至っていません。

今回は、ドライバーなら知っておきたい飲酒運転の危険性、飲酒運転に関する法律や行政処分について、詳しく解説します。

飲酒運転はなぜ危険なのか

令和3年中の飲酒運転による交通事故件数は、2,198件で、飲酒有無別の死亡率を見てみると、飲酒運転の死亡事故率は、飲酒なしの約9倍と極めて高く、飲酒運転による交通事故は死亡事故につながる危険性が高いことが分かります。

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(※) 死亡事故率=死亡事故件数÷交通事故件数×100%

出典:警察庁ウェブサイト

参考:警察庁「飲酒運転による死亡事故件数の推移」

飲酒運転による死亡事故の特徴

• 発生時間は、22時から6時までが全体の約6割を占める
• 年齢層別の免許保有者10万人当たりの死亡事故件数は、30歳未満の年代で多い
• 飲酒死亡事故件数は、30歳未満では22時から6時まで、65歳以上では14時から22時までに多く発生
• 運転者の飲酒状況は、酒酔い又は酒気帯び(呼気0.25mg/l以上)が約7割を占める
• アルコールの影響が大きい状況では、影響が小さい状況に比べて、車両単独による死亡事故が多く発生している
• 単独事故の割合が高い(約6割)。また、死者数の約7割は運転者・同乗者だが、第三者の死者数も約3割に上る

低濃度のアルコールでも危険

飲酒運転の原因のひとつに、ドライバー自身の過信や油断があります。
飲酒運転をした理由として、よくあるものは次の通りです。

「事故を起こさない自信があった」
「飲んだお酒の量が少ないので大丈夫だと思った」
「近距離だから」
「出勤のため二日酔いで運転してしまった」
「少し寝たので大丈夫だと思った」

お酒に弱いと言われる人だけでなく、お酒に強いと自信がある人も、低濃度のアルコールで運転操作等に影響を及ぼすことが、各種調査研究により明らかになっています。

例えば、ビール350ml缶1本を摂取した場合の、アルコールが運転技能に及ぼす影響 を見てみると、集中力が低下する、反射時間が鈍くなる、情報収集能力が阻害される、注意力が散漫になるなどが挙げられます。

アルコールが体内から抜けるまで

体重60kgの人の場合、純アルコール20gが体内から消えるまでに約4時間かかると言われています。
純アルコール20gは、ビール中びん(500ml)1本、日本酒1合、ウイスキーダブル1杯にあたります。
例えば、深夜まで大量のアルコールを飲んだ場合には、翌日の午前中までアルコールが体内に残っているという事になります。
仮眠・休息を取った後や、翌朝の運転で事故を起こしたり、飲酒運転として検挙されたりするケースは珍しいことではありません。

飲酒運転に関する法律

飲酒運転は、飲酒後にそのアルコールの影響がある状態で、自動車などの車両を運転する行為を指し、多くの国で違法・犯罪として厳重に取り締まりが行われています。
日本では、「道路交通法」によって、以下のように定められています。

道路交通法第65条の飲酒運転に関する表記

道路交通法第65条第1項
何人も酒気を帯びて、車両等を運転してはならない

道路交通法第65条第2項
何人も、酒気を帯びている者で、前項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれのある者に対し、車両等を提供してはならない。

道路交通法第65条第3項
何人も、第1項の規定に違反して車両等を運転することとなるおそれのある者に対し、酒類を提供し、又は飲酒をすすめてはならない。

道路交通法第65条第4項
何人も、車両(トロリーバス及び旅客自動車運送事業の車両を除く)の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、当該運転者に対し、当該車両を運転して自己を運送することを要求し、又は依頼して、当該運転者が第1項の規定に違反して運転する車両に同乗してはならない。

※ 「何人も」として、運転免許の有無に関わらず、全ての人を対象としています。
※ 「車両等」には、自動車、電車、軽車両等(自転車など)が含まれます。
※ 「酒気を帯びて」は、身体に通常以上のアルコールを保有した状態を指し、アルコールが「酒類」以外の場合も含みます。

飲酒運転「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の定義

飲酒運転は、道路交通法上で「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類に分類されています。
では、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」にはどんな違いがあるのか?
具体的に見ていきましょう。

酒気帯び運転

酒気帯び運転とは、アルコールを摂取している状態で車両を運転する行為で、運転手の飲酒量・健康状態に関わらず、法律上では禁止されています。

呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上、または血液1ミリリットル中に0.3mg以上のアルコール濃度を含んでいると、取り締まりの対象になります。

酒酔い運転

酒酔い運転とは、アルコールの影響によって、正常な運転ができない恐れがある状態にも関わらず、運転する行為です。

酒酔い運転と判断される大まかな基準は、

• 直線の上をまっすぐ歩くことができない
• 明らかに呂律が回っていない
• 質疑に対して正常な受け答えができていない

などです。
以上の観点から「酔っ払っている状態(酩酊状態)」であるかどうかを見られ、呼気中の濃度に関わらず、取り締まりの対象となります。
たとえアルコール濃度が0.15未満であったとしても、運動機能、平衡感覚機能の麻痺、認知能力の低下のような症状があれば、酒酔い運転として検挙される可能性があるのです。

このように、たとえ少量でも飲酒(アルコールを摂取)したら、紛れもなく「飲酒運転」に該当することを、覚えておきましょう。

飲酒運転の罰則と行政処分

道路交通法上で、飲酒運転には「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」がありましたが、それぞれに罰則や処分が異なります。

違反点数

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点数による処分で「最低~」となっているのは、累積点数や前歴によって処分の重さが変わるためです。
違反の前歴や累計点数があれば、重い処分が課されます。
また、「欠格期間」とは、免許の取り消しになった後、再度免許の取得が許されない期間のことをいいます。

刑事処分

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上記の刑罰はあくまでも検問などで見つかった場合です。
飲酒運転により、死傷事故を起こした場合は、さらに厳しい刑罰が科されます。

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警察官による呼気検査を拒んだ場合の罰則

危険防止の措置として、警察官が行う呼気検査を拒んだ場合にも罰則があります。

道路交通法第67条第3項の規定による警察官の検査を拒み、又は妨げた者は、3ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。(道路交通法第 118 条の 2)

車両・酒類の提供者・同乗者の罰則

道路交通法第 65 条に違反すると、飲酒運転をした運転者だけではなく、 車両・酒類を提供した人や、車両に同乗していた人にも、 厳しい罰則があります。
運転する可能性が有る人に飲酒を勧めたり、飲酒した人に運転させたり、車両を提供しないよう、十分に注意しましょう。

ドライバーが酒気帯び運転した場合
車両の提供者(第2項違反) 3年以下の懲役 または50万円以下の罰金
酒類の提供者(第3項違反) 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
車両等の同乗者(第4項違反) 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金

ドライバーが酒酔い運転した場合
車両の提供者(第2項違反) 5年以下の懲役 または100万円以下の罰金
酒類の提供者(第3項違反) 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
車両等の同乗者(第4項違反) 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金

飲酒運転による事業用自動車事故

国土交通省の資料によると、飲酒運転による事業用自動車の交通事故の推移は、平成24年から横ばい傾向でしたが、令和元年では飲酒運転による交通事故が増加。
全体の発生数が56件であるのに対し、トラックの飲酒運転による交通事故だけで48件も発生したことが明らかになっています。

参考:

国土交通省事業用自動車の交通事故統計(令和元年版)

事業者への罰則および行政処分

運転者による酒酔い運転・酒気帯び運転があった場合、事業者は次のような処分を受ける事になります。
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飲酒運転をなくすために

飲酒運転は「犯罪」です。
飲酒運転が危険な行為であることを十分理解した上で、運転者とその周囲の人が、「しない!」「させない!」という強い意志を持たなければ、飲酒運転根絶は実現しません。
自分自身が運手者であるときはもちろん、飲酒を行わない人、運転をしない人も、飲酒運転に対する意識の向上が必要です。

特に、事業用自動車を運行する企業や事業者は、飲酒運転が重大な事故につながるケースもあるため、従業員の飲酒運転を100%ゼロにする義務があります。

国土交通省は、飲酒運転をなくすための活動を通して、運送事業者が運転者に対して実施する点呼において「運転者の酒気帯び」の有無を確認する際に、アルコール検知器を使用することを義務付けています。

これまでは運送業や旅客運送業などの、いわゆる「緑ナンバー」を対象としてアルコール検知器でのチェックが義務化されていましたが、2022年4月と2022年10月の法改正施行で、「白ナンバー」の車を規定台数以上使用する事業者も対象となりました。
アルコール検知器は国家公安委員会が定めた機能の付いたものを使用し、常時使える状態にしておく必要があり、営業所ごとにアルコール検知器を常備する、遠隔地での業務は運転者に携帯型のアルコール検知器を携行させるなどの対応が義務付けられています。

当サイトでも「飲酒運転防止 アルコール検知システム」をご紹介していますので、ぜひご覧ください。

まとめ

飲酒運転による交通事故は、死亡事故につながる危険性が高い。
低濃度のアルコールでも、運転操作等に影響を及ぼす。
飲酒運転は、道路交通法第65条によって取り締まりが行われている。
飲酒運転は、道路交通法上で「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類に分類されている。
酒気帯び運転とは、アルコールを摂取している状態で車両を運転する行為で、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上、または血液1ミリリットル中に0.3mg以上のアルコール濃度を含んでいると取り締まりの対象になる。
酒酔い運転とは、アルコールの影響によって、正常な運転ができない恐れがある状態にも関わらず運転する行為で、アルコールの濃度に関係なく状態によって取り締まりの対象となる。
「酒気帯び運転」「酒酔い運転」には、それぞれ罰則や行政処分が設けられていて、累積点数や前歴によって処分の重さが変わる。
飲酒運転をした運転者だけではなく、 車両や酒類を提供した人、車両に同乗していた人にも罰則がある。
事業車両の運転者による酒酔い運転、酒気帯び運転があった場合、事業者は罰則及び行政処分を受ける。