どうして安全衛生管理者が必要なの? 仕事内容と改善例をご紹介します。

衛生管理者

令和3年1月から12月までの労働災害による死亡者数(以下「死亡者数」という。)は867人(前年比65人・8.1%増、平成29年比(以下「29年比」という。)111人・11.3%減)と4年ぶりに増加となりました。

厚生労働省労働基準局「令和3年の労働災害発生状況」

多くの企業は、労働災害防止のために管理の強化や教育の充実など、様々な対策を取っています。しかし、残念ながらまだまだ労働災害は起こり続けているのが現状です。

工場内における安全性の確保や衛生状態の管理は、人々の健康や安全を守るだけでなく、製品の品質に大きな影響を与えます。このため、工場では安全衛生管理者という専門職が必要とされています。本記事では、工場における衛生管理者の重要性や、その役割について詳しく解説します。工場の安全性を確保し、良質な製品を提供するために必要な知識を身につけましょう。

そもそも安全衛生管理者とは?

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安全衛生管理者は労働安全衛生法第10条に基づいて、事業を実質的に統括管理する者によって選任されます。常時50人以上の労働者を使用する事業場では必須となっています。

安全衛生管理者の役割は、工場内で作業している従業員たちの健康と安全を確保することにあります。労働者の危険または健康障害を防止するための措置や労働者の安全・衛生のための教育の実施、健康診断の実施、再発防止対策や労働災害防止の原因の調査などがあります。

工場における安全衛生管理者の必要性と役割

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製造工場では、多くの従業員が働くため、様々な危険が存在します。その中でも、資材や化学物質による健康被害や機械運転時の事故などは特に深刻であり、現代の製造業界では喫緊の課題となっています。これらの危険性から従業員を守り、安定的な生産体制を維持するため、安全衛生管理者は必要不可欠と言われています。

安全衛生管理者は製造工程における危険性を抑えるため、定期的な監査を行います。作業場の巡回、設備・作業方法・衛生状況の確認、従業員の健康チェックなど役割は多岐にわたります。

また、労働災害発生時にも迅速かつ正確な対応を行わねばなりません。具体的には原因調査や再発防止策の立案などを含みます。安全衛生管理者がその能力を発揮し、従業員たちの健康を守ることで、生産性が向上することが期待されています。

また、製造工場の安全衛生管理には遵守すべき法的規定も存在します。既定の内容をしっかりと理解し、十分に遵守する必要があります。それによって、従業員たちはより安全な作業環境で仕事を行うことができます。

安全衛生管理者が行う仕事

安全衛生管理者は、企業内における健康と安全を確保するための重要な役割を担っています。その仕事内容は非常に幅広く、業界や企業によって異なりますが、一般的には以下のような具体的な業務が挙げられます。

①健康状態の把握・管理

まず、安全衛生管理者は、従業員の健康状態を把握・管理することが求められます。具体的には、健康診断の実施や結果報告の提出、休職者や復職者への対応、ストレスチェックの実施等があります。また、従業員への健康相談窓口を設置し、必要であればカウンセリング等も提供します。

②調査と改善

次に、作業環境の衛生上の調査と改善もこの職責に含まれます。職場内の危険度分析や労働衛生対策計画の立案・運営などを行い、労働条件や施設等の改善を図ります。例えば有害物質や騒音・振動・照射量等被曝予防の施策や、災害・事故への備え、感染症予防策などが含まれます。

③備品の点検整備

さらに、労働衛生保護具や救急用具等の点検及び整備も日常業務として行われます。これは、従業員が十分な保護を受けられる環境が整っていることを確認するためです。また、作業環境における清潔度や整理整頓も率先して管理を行うことで、作業がしやすく気持ちの良い職場作りにつながります。

④記録

最後に、その他の仕事内容としては、統計データの取得・分析・報告や衛生日誌の記載等職務上の記録の整備等が挙げられます。これまでにご説明した全ての職責をしっかりと担うために必要不可欠な情報管理であり、組織運営において重要な役割を果たします。

安全衛生管理者は、従業員だけでなく企業全体を対象にして健康と安全面を見据えたサポートを行います。衛生管理者が備えている多岐に渡るスキルと経験は、企業の労働環境改善や事故予防策の向上など多くの面で貢献することが期待できます。

安全衛生管理者の権限と注意点

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安全衛生管理者には工場内で衛生管理に必要な措置を講じる権限が与えられます。具体的には、作業場環境の改善や作業条件の向上など、労働者の健康障害を予防するための対策を行い、必要に応じて従業員へ指示することができます。

ただし、注意点としては経営者や従業員から制約を受ける可能性もあります。工程上の問題やコスト面の効率化など様々な理由で、安全管理者が望む指示が実現しないケースもあるかもしれません。その際は柔軟な対応が求められます。

また、従業員へ衛生教育や健康相談の実施も衛生管理者の業務に含まれます。人事権限がないということもあり、従業員へのアプローチは年齢や経験などを考慮して柔軟に対応する必要があります。

さらに、安全衛生委員会を開催し、上層部へ報告することでプレッシャーをかけたり、他企業・地域のノウハウを取り入れるなど工夫をすることも大切です。また、自己啓発のための勉強会や研修に積極的に参加することも重要です。

今日の社会では労働災害やストレス社会といった問題があります。その中でも工場内で働く労働者はリスクが高く、常に健康管理に気を配る必要があります。この点から言えば、安全衛生管理者は工場で働く人々の命運を左右する重要なポジションだと言えるでしょう。

労働衛生保護具や救急用具の整備と点検

労働衛生保護具や救急用具の整備と点検は、労働基準法で義務付けられています。事故や疾病の発生を未然に防ぐことを目的とし、定期的な点検や交換が求められます。

・労働衛生保護具について

まず、労働衛生保護具ですが、これは作業中の安全性を確保するための必須アイテムといえます。例えば、安全帽やヘルメット、安全靴、保護メガネなどです。これらは日々装着するものですので、それだけ劣化や破損が起こりやすいです。

そのため、使用前・使用後にしっかりと点検し、異常があった場合は適宜修理または交換を行う必要があります。

・救急用具について

救急用具についても同じく点検・整備が欠かせません。緊急時に迅速かつ適切な対応をするためにはあらかじめ備えておく必要があります。心肺蘇生法を知っている方はいらっしゃるもしれませんが、酸素ボンベやAEDなど、より効果的な救急措置を講じるための機器についても十分な点検と整備が必要です。

さらに、職場で起こるトラブルや緊急事態に備え、事前に十分な対処を練っておくことが大切です。そのためには、社員全員が適切な衛生教育を受ける必要があります。衛生面でのマナーやリスクを減らす行動の仕方、応急手当の方法やエレベーター階段の利用法などを学び、日常業務中からその知識を活用しましょう。

労働衛生保護具や救急用具の整備と点検は、従業員たちへの健康や安全に対する配慮に他なりません。このようなサポートを日々受けられることで従業員は安心して仕事に専念できます。と同時に緊急時へ対応も準備しておくことができるため、社員と会社双方のメリットを生む取り組みであるといえます。

より健康的な職場環境を実現するために

定期的なストレスチェックを行う

従業員のストレスチェックと安全衛生教育の実施は、メンタルヘルスの不調や労働災害を未然に防止するために重要な取り組みです。

対象は全従業員に対して定期的に行いましょう。定期的にチェックすることでその人自身のストレスやその原因などに気づくことができます。また、ストレスチェック結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげていくことで従業員一人ひとりが抱える悩みや問題を減らすことができます。

従業員が心身ともに健康であることは、生産性の向上にも繋がります。従業員のメンタルヘルス不調のリスクを低減させるためには、定期的なストレスチェックをすると良いでしょう。

安全衛生教育を行う

ストレスチェックだけでなく安全衛生教育をする企業もあります。例えば、ウイルス感染症対策や手洗い・うがい方法などを中心に、従業員が健康的な環境で働けるように配慮しているところもあります。もっと踏み込んだパターンだと従業員の生活習慣(健康的な食生活や運動の重要性など)にも指導するところもあります。

労働災害の状況と予防策

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労働災害は、現代社会において依然として問題視されている課題の一つです。労働者が職場で負傷したり病気になったりすることは、その本人だけでなく家族や周囲の人たちにも大きな影響を与えます。

2019年度の労働基準関係統計では、労働災害発生件数は40,494件でした。この数字は減少傾向にあるものの、まだまだ多くの労働者が職場で負傷しているということです。また、特に建設業や運輸業など危険物質や高所作業が多く含まれる業種では、労働災害の発生率が高い傾向にあります。

どのような予防策をすべきか。

一つ目の方法は、職場での安全管理を徹底することです。労働災害の多くは職場環境や作業方法、機械の不備などが原因となって起こるものです。したがって、事業者は職場の危険要因を洗い出し、十分な対策を講じることが必要です。

また、労働者自身も安全に注意して作業に取り組むことが大切です。過剰な負荷に耐えたり、無理な体勢で作業を行うことは体に負担をかけるばかりでなく、事故の原因にもなります。したがって、ライフスタイルの改善やストレッチ・エクササイズの実践など心身共に健康な状態で仕事に取り組むよう心掛けましょう。

安全な職場のイメージ

このように、労働災害を減らすためには職場環境や作業方法の改善だけでなく、労働者自身が健康的なライフスタイルを送ることも大切です。そして“一人も被災者が出ない”職場作りを目指していきたいものです。

安全衛生管理者による衛生状態の改善の例

安全衛生管理者が職場の衛生状態を改善するために実施できる具体的な例を紹介します。

①職場内での清掃を定期的に行う

特に、共有スペースやトイレなどの清掃を徹底することで、ウイルスや菌などの感染リスクを抑えられます。また、使い捨てマスクや手袋などの資材も備蓄し、毎回使う前にちゃんと確認してから使用するよう徹底してください。

②自己申告制度の導入

労働者間で風邪やインフルエンザなどの伝染病が出ている際は、義務ではありませんが自己申告制度を導入することで、「風邪を引いたので今日は出勤せずに自宅で休む」などということができます。このような取り組みによって、職場全体でも感染症予防対策が徹底されることになります。

③心理的な負担を改善する

最後に、ストレス社会でのメンタルヘルス対策も大事です。例えば、「長時間労働」「複数のプロジェクトを同時進行する」「上司とのコミュニケーション不足」といった問題がある際は、就業時間や負荷軽減を検討することで、メンタルヘルス面でも改善される可能性があります。

以上、安全衛生管理者が職場の衛生状態を改善するために実施できる具体的な例を紹介しました。このような取り組みを行うことで、労働者の健康面・衛生面・安全面が改善されやすくなると思います。

まとめ

製造業においては、機械や作業環境が複雑で危険が伴うことがあります。特に、製造業で発生する労働災害は、深刻な負傷や亡くなるケースがあるため、衛安全生管理者の役割は重要です。
安全衛生管理者は従業員たちの安全と健康を確保する責任を持ち、長期的に見た場合でも労災や損失などのリスクを回避することに役立つことができます。今後も製造工場において十分な衛生管理体制を整備し、人々が健康かつ快適に働ける環境づくりに努めていく必要があるでしょう。

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