国際的に活躍する企業では、原材料の調達から生産、流通、販売によりエンドユーザーに製品やサービスが届くまでのサプライチェーン全体が、国内だけではなく異なる国や地域をまたいで構成されています。
2004年にエレクトロニクス業界における労働環境問題や自然環境問題への対応を目的として設立された「RBA(Responsible Business Alliance)」は、グローバルサプライチェーンにおける企業の社会的責任を推進するための国際的な非営利団体です。
RBAの行動規範には、労働環境が安全であること、また責任を持って倫理的にかつ人権と環境を尊重してビジネスが行われることを確実なものにするための基準が定められています。
行動規範には、労働者を守るための多岐にわたる項目が具体的に定められ、参加企業はその項目を尊守しなければならないのです。
更に、その参加企業で使用される設備や製品もRBAの行動規範に則らなければならないという、厳しい基準があるのです。
今回は、この「RBA(Responsible Business Alliance)」について詳しく説明いたします。
目次
RBA(Responsible Business Alliance)の活動とは?
RBAの活動は、労働者の権利、環境保護、倫理的なビジネス慣行を確保するための行動規範を設定しています。
この行動規範は、国際労働基準や人権に関する国連の枠組みに基づいています。
次に、この団体に加入している参加企業とそのサプライヤーに対して定期的な監査と評価を実施し、基準の遵守状況を確認しています。
更に、トレーニングプログラムやリソースを提供し、参加企業が持続可能な実践を効果的に導入できるよう支援しています。
また、参加企業間での情報共有や問題解決のための効率的な方法の促進を通じて、業界全体の改善を目指しています。
RBAの活動により、労働者の安全と健康の向上、労働条件の改善、環境への配慮が進み、より倫理的で持続可能なサプライチェーンの構築が推進されているのです。
RBA(Responsible Business Alliance)の行動規範
国際労働基準や人権に関する国連の枠組みに基づいていているRBAの「行動規範」とはどのような内容なのかを説明します。
労働:LABOR
すべての労働者が人権を享受し、尊重される権利を持つことが約束されなければなりません。これには、差別や虐待、ハラスメントの禁止、プライバシーの保護、自由な労働組合の結成や活動に対する妨害の禁止が含まれます。
参加企業は、適切な労働時間の確保、適正な賃金支払い、安全で健康的な労働環境の提供を目指さなければなりません。これには、労働者の健康と安全を守るための措置や、過重労働の防止などが含まれます。
児童労働や強制労働を厳密に禁止しています。特に、未成年者の権利を保護し、安全な環境での学業との調和を促進しています。
健康と安全:HEALTH AND SAFETY
労働者が安全で衛生的な環境で働くことを保証するための対策を講じることが求められています。これは、労働災害や健康被害を予防するための措置が含まれ、設備や作業手順の安全性を確保することを意味します。
労働者の安全を確保するため、企業は緊急時の対応計画を策定し、火災や自然災害などの緊急事態に備えた訓練を実施することが求められています。これには、避難ルートの確保や緊急用具の整備が含まれます。
労働者の健康を保護するための予防措置や健康管理プログラムの導入を推奨しています。これには、定期健康診断や健康リスクの評価、必要な治療やケアの提供が含まれます。
有害物質の取り扱いに関する厳格な基準が設けられており、労働者がこれらの有害物質に曝されないようにするための対策が求められています。適切な保管、ラベリング、廃棄の手順が含まれ、労働者に対する適切な訓練も提供しなければなりません。
労働者の身体に負荷のかかる作業や機械により労働者が怪我をする危険がある場合、リスクを最小限に抑え、適切に管理しなければなりません。
労働者が晒される危険について、労働者の理解できる言語で適切な職場の安全衛生に関する情報とトレーニングを労働者に提供しなければなりません。
環境:ENVIRONMENT
参加企業は、すべての関連する環境法規制を遵守し、必要な環境許可を取得し、それに基づく報告を行うことが求められています。これには、排出物の管理や廃棄物の処理が含まれます。
企業は、汚染防止と資源の効率的な利用に努めることが義務付けられています。具体的には、有害物質の排出削減、リサイクルの促進、エネルギーと水の使用効率の向上が含まれます。
製造過程で使用される化学物質やその他の有害物質の取り扱いには特別な注意が払われ、その安全な使用、輸送、保管、および廃棄が徹底される必要があります。また、可能な限り環境負荷の少ない代替物質の採用が推奨されます。
参加企業は、廃棄物の発生を最小限に抑え、適切に管理することが求められています。これには、廃棄物の削減、リサイクル、再利用の促進が含まれます。また、危険廃棄物については、特別な管理と処理が必要です
製品のライフサイクル全体を通じて、環境への影響を最小限に抑える持続可能な設計が奨励されています。これは、エネルギー効率の向上、リサイクル可能な材料の使用、製品寿命の延長を含みます。
参加企業は、従業員やサプライヤーに対して環境教育を実施し、環境保護の重要性を理解させるための活動を行うことが求められています。これにより、全社的な環境意識の向上と持続可能な行動の促進が図られます。
倫理:ETHICS
参加企業は、すべての取引や業務活動において誠実で公正な行動を取ることが求められます。これは、贈収賄や腐敗の防止、不正行為の禁止、利益相反の回避が含まれます。企業は透明性を確保し、倫理的なガバナンスを維持することが期待されます。
参加企業は、業務活動、構造、財務状況、パフォーマンスに関する正確かつ適時の情報を開示することが求められます。これにより、透明性が確保され、ステークホルダー(従業員、顧客、投資家、サプライヤーなどの利害関係者)からの信頼を得ることができます。
参加企業は、知的財産権を尊重し、他者の知的財産を適切に使用することが求められます。これには、特許、商標、著作権の遵守が含まれ、知的財産の不正使用や侵害を防止します。
参加企業は、公正な競争を促進し、誤解を招く広告や販売手法を避けることが求められます。これは、消費者や市場の信頼を維持し、健全な市場環境を保つために重要です。
参加企業は、顧客、サプライヤー、従業員の個人情報を保護し、プライバシーを尊重することが求められます。これには、データの収集、保存、処理、共有に関する適切な管理が含まれます。
参加企業は、違反や不正行為を報告する労働者を保護し、報復を禁止する措置を講じることが求められます。これにより、労働者が安心して不正行為を報告できる環境を整えることが必要です。
参加企業は、製造する製品に含まれる特定の鉱物の原産地と調達経路について、経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)の「紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのガイダンス」または同等に認知されたデューディリジェンスの枠組みに合致した方法で調達されなければなりません。
出典:鉱物の責任あるサプライチェーンに向けた グローバル・スタンダード
マネジメントシステム:MANAGEMENT SYSTEMS
参加企業は、RBAの行動規範に従うことを公式に表明し、倫理的かつ持続可能なビジネス運営を目指す公約や責任を示す必要があります。これは、経営陣の明確なサポートとリーダーシップが求められます。
参加企業は、行動規範の遵守と実行に対して責任を持つ経営層や担当者を明確に指定し、必要なリソースを提供することが求められます。これには、適切な監督と管理が含まれます。
参加企業は、すべての関連する法令および顧客の要求事項を順守することが求められます。これには、環境、労働、安全衛生、倫理などに関する規制が含まれます。
参加企業は、事業活動に関連するリスクを定期的に評価し、リスクを管理するための対策を講じる必要があります。これには、環境リスク、労働リスク、倫理リスクの評価と管理が含まれます。
参加企業は、持続可能なビジネス慣行の達成に向けた具体的な目標を設定し、進捗を定期的に評価・報告することが求められます。これにより、継続的な改善が促進されます。
参加企業は、従業員やサプライヤーに対して行動規範の内容や重要性を理解させるための教育とトレーニングを提供する必要があります。また、従業員とのコミュニケーションを通じて、規範の実践を促進します。
参加企業は、行動規範の遵守状況を定期的に監査・評価し、必要な改善措置を講じることが求められます。これには、内部監査および外部監査の実施が含まれます。
発見された問題や不正行為に対して、迅速かつ効果的な是正措置を講じるとともに、再発防止のための対策を実施することが求められます。
参加企業は、ステークホルダー(従業員、顧客、投資家、サプライヤーなどの利害関係者)との対話を重視し、サプライチェーン全体での倫理的なビジネス慣行の推進に協力することが求められます。
RBA(Responsible Business Alliance)の行動規範は多岐にわたり、参加企業が責任を持って倫理的かつ人権と環境を尊重したビジネスが行われることを明記しています。
その行動規範を尊守することによって、企業は社会的責任を果たせるのではないでしょうか。
RBA(Responsible Business Alliance)の歴史と設立された背景
RBA(Responsible Business Alliance)は、2004年にEICC(Electronic Industry Citizenship Coalition)として設立されました。
その背景には、エレクトロニクス業界の一部の国において、労働者が厳しい労働条件下での労働や、電子廃棄物による環境への影響に、懸念の声が高まりつつあり、国際的なサプライチェーンを持つ企業が増える中で、倫理的かつ持続可能なビジネスを行う必要性が認識されるようになったからです。
設立された背景
エレクトロニクス業界では、発展途上国において労働者が厳しい労働条件で労働させられていることが問題視されていました。低賃金、長時間労働、不適切な労働環境などが一般的であり、この問題に対処するための国際的な基準の必要性が高まっていたのです。
電子廃棄物の増加や有害物質の使用が環境に悪影響を及ぼしていることから、環境への配慮を求める声が強まっていたのです。
企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)や持続可能な開発目標(SDGs)に基づき、透明性と倫理的なビジネスを促進する必要に迫られ、企業が倫理的に行動し、持続可能なサプライチェーンを構築することが求められるようになったのです。
RBAは、エレクトロニクス業界における労働環境や環境問題への対応を目的として設立され、現在では様々な業界で倫理的かつ持続可能なビジネス慣行を推進する役割を担っています。
RBAの活動を通じて、企業は労働者の権利保護や環境保護を実現し、持続可能なサプライチェーンの構築を目指しているのです。
RBA(Responsible Business Alliance)に参加企業の現状
RBAの参加企業は、エレクトロニクス、自動車、玩具業界などのさまざまな企業が含まれ、その数は500社を超えるといわれています。
これらの参加企業は、年間売上高は7兆7,000億ドルを超え、世界中で2,150万人以上を雇用し、120か国以上で製品を製造しています。
RBA(Responsible Business Alliance)に参加企業
世界でも有名なAmazon、アップル、マイクロソフトなどの企業が参加しており、以下のURLから参加企業を確認することができます。
日本企業も多く参加しており、例えばキャノン、ソニー、パナソニック、富士通、京セラ、三菱電機などが参加企業として名を連ねているのです。
RBA(Responsible Business Alliance)に参加する理由
企業がRBAに参加する理由は多岐にわたります。
労働者の権利保護、安全な労働環境の確保、環境保護など、国際的な基準に基づいているRBAの行動規範を尊守することで、参加企業は倫理的かつ持続可能なビジネスを推進することができます。
RBAに参加することで、企業はサプライチェーン全体での透明性と責任を確保できます。RBAの監査と評価プログラムは、サプライヤーがRBAの基準を満たしているかを確認し、改善が必要な領域を特定するのに役立ちます。
RBAの基準に準拠することで、企業は労働問題や環境問題に関連するリスクを軽減できます。例えば、強制労働や児童労働の根絶に向けた取り組みは、法的な問題や社会的な非難を避けるのに役立ちます。
RBAは、メンバー企業間で問題解決のための効率的な方法を共有し、学習する場を提供します。これにより、企業は業界全体の標準を引き上げることができ、より効率的で効果的な運営を実現できます。
RBAのメンバーシップは、企業が国際的なパートナーやステークホルダー(従業員、顧客、投資家、サプライヤーなどの利害関係者)と協力し、ネットワーキングを行う機会を提供します。これにより、グローバルな課題に対処し、共通の目標に向けて協力することができます。
RBAへの企業参加は、企業が倫理的かつ持続可能なビジネスを実践し、サプライチェーン全体での透明性と責任を確保するための重要なステップとなります。
また、競争優位性の確保、リスク管理、問題解決のための最も効果的な方法の共有、国際的な協力とネットワーキングの機会を提供されます。
これにより、企業は持続可能な成長と社会的責任を両立させることができるのです。
RBA(Responsible Business Alliance)の行動規範の尊守
RBAの参加企業になれば、国際的に多くのメリットが得られますが、参加する為には先に述べたRBAの「行動規範」を尊守しなければなりません。
RBA(Responsible Business Alliance)の行動規範に則った製品
企業の危機管理を担う製品として、RBAの「行動規範」の「B:健康と安全:HEALTH AND SAFETY」の「2)緊急災害対策」をクリアするために、「プッシュオープンバー「パニックバー」」が採用されました。
2)緊急災害対策
潜在的な緊急事態および事象を特定、評価し、その影響を、緊急事態発生の報告、従業員への周知および避難手順、労働者の教育訓練を含む、緊急対策および対応手順を実施することにより、最小限に抑えなければなりません。
防災訓練は、少なくとも年に1度、または現地法で義務付けられるとおり、いずれかより厳しい頻度で実施しなければなりません。緊急対策には、適切な火災報知器および消火設備、分かり易く障害物のない出口、適切な非常口のある施設、緊急対応にあたる人員の連絡先情報、および復旧計画なども含まれなければなりません。それらの対策および手順は、生命、環境、および財産への損害を最小限に抑えることに重点を置くものとします。
※出典:RBAの「行動規範」の「B:健康と安全:HEALTH AND SAFETY」の「2)緊急災害対策」の抜粋
上記の条件に適合したのがプッシュオープンバー「パニックバー」だったのです。
条件を満たした「パニックバー」
階段に通じる出口、屋外への出口は、数や場所が適切でありアクセス可能で、適切に維持管理されていなければならないという条件の元、企業はその条件を満たした「緊急避難口」を設置しなければなりませんでした。
プッシュオープンバー「パニックバー」は上記の条件をクリアしたのです。
◆プッシュオープンバー「パニックバー」の特長
パニックハンドル「パニックバー」は、タッチバーを押すだけの「ワンアクション」で簡単にドアを開けられます。また、体の不自由な方、車いすの方、お子様、ご高齢の方など、だれでも簡単にドアを開閉できる仕様です。
緊急災害時は素早い避難が必要な一方、平常時には外部からの侵入を防ぐセキュリティも重要です。パニックハードウェア「パニックバー」は、建物内部からは自由に外へ退出し、外部からは入れない仕様にすることも可能。緊急避難と同時にセキュリティ対策も万全です。
タッチバー、プルハンドル、片開き、両開き、防火戸(防火扉)、退出口用、避難口用、非常口用など様々なタイプをご用意しているので、ほとんどの既存ドアに取り付けることが可能です。またオプションとして、電気錠、防災システムなど導入可能です。
プッシュオープンバー「パニックバー」は、緊急避難をスムーズにするだけでなく、オプション機能を付けることで防災システムと連動することもできます。
普段は常時施錠、災害時は自動開錠にするなど、防災システムを通しての切り替えが可能です。
企業は、RBAの行動規範に則って製品を採用せねばならず、「パニックバー」はその条件満たしたことで採用が決定したのです。
そうなると、国際的なRBAの行動規範に則って製品を作成すれば、RBAの参加企業からも世界基準の優良な製品だと認識されるのです。
RBA(Responsible Business Alliance)の行動規範を尊守した製品
RBAの行動規範に則った製品ということは、日本国内だけでなく厳しい世界基準をクリアした製品として認められたということです。
今後、原材料の調達から生産、流通、販売によりエンドユーザーに製品やサービスが届くまでのサプライチェーンはますますグローバル化が進み、日本国内だけではなく様々な国の企業で構成されていくことになります。
その時、企業の一つの指針となるのが、RBAの行動規範だと考えられます。
RBAの行動規範に則った製品を作成することによって、日本国内のマーケットだけでなく、国際的な製品へと成長していく可能性を秘めています。
また、RBAの参加企業からの依頼が増えるという想定もされるのではないでしょうか。
・国際的なサプライチェーンでは、労働環境の安全、環境保護など、ビジネスに関する世界的な基準が必要不可欠。
・企業の社会的責任を推進するための国際的な非営利団体であるRBAの行動規範は、労働者の権利、環境保護、倫理的なビジネス慣行を確保するための国際的な指針である。
・日本国内でもRBAの参加企業が増加し、その行動規範に則った製品が必要不可欠になってくるでしょう。