地震災害の多い日本に住んでいる限り、地震対策から目を背けられません。工場や倉庫の稼働中に地震が起こった場合、従業員や設備が被害にあう可能性があります。被害を最小限に抑えるためには、日頃の地震対策が必要です。
本記事では、工場や倉庫の地震対策を建物・室内の観点から解説しています。地震対策を何から始めたらいいか悩んでいる責任者の方は、ぜひ最後まで目を通していただけると幸いです。
目次
地震の多い日本では地震対策が必須
日本は世界的に見ても、地震活動が活発な地域です。いつどこで大きな地震が発生してもおかしくありません。過去には多くの大規模地震が発生し被害をもたらしました。
発生年 |
地震名 |
マグニチュード |
最大震度 |
1923年 |
関東大震災 |
M7.9 |
震度6 ※当時は震度の階級が震度6まで |
1995年 |
阪神・淡路大震災 |
M7.3 |
震度7 |
2011年 |
東日本大震災 |
M9.0 |
震度7 |
2024年 |
能登半島地震 |
M7.6 |
震度7 |
近年は、南海トラフ地震や首都直下地震など、大規模地震の発生が懸念されています。
地震は予測ができないうえ、ある日突然やってきます。労働者を守るためには、日頃から地震対策をしておくことが大切です。
また、設備の耐震強度の見直しだけではなく、地震後に早く再稼働できる備えも必要となります。
大規模地震が工場の存続に影響を及ぼす
以下は、大規模震災後に倒産した企業数を示した表です。
出典:内閣府 激甚化する大規模自然災害に係るリスクファイナンス検討会 第2回 資料1-1 過去の大規模災害における事業者への影響
東日本大震災が起きた後、5年間で倒産した件数は1,493件となっています。その中でも製造業の倒産は、全体の19.4%となりました。震災と余震により生産機器が故障した結果、事業の継続が難しくなった会社が多く存在します。
地震対策を行うことが、工場や倉庫の存続を大きく左右するといえるでしょう。
工場・倉庫に必要な地震対策
多くの商品や資材、設備などが保管されている工場や倉庫が、地震被害にあうと事業活動に大きな影響を受ける可能性があります。
工場・倉庫に必要な地震対策を「建物」と「室内」に分けて見ていきましょう。
建物への地震対策
地震によって建物が倒壊すると、事業活動の停止や従業員の怪我につながる可能性があるため、対策が必要です。建物を強化する地震対策には、耐震・制震・免震の3つがあります。
方法 |
概要 |
耐震 |
・建物の骨組みを強化し、地震の揺れに耐える構造にする方法 ・新築時に採用されることがほとんど ・壁を厚くする、屋根を薄くするなどの対策 |
免震 |
・建物と地面の間に免震装置を設置し、地震の揺れを建物に伝わりにくくする方法 ・地震の揺れを大幅に削減できる |
制振 |
・建物に制振装置を設置し、地震エネルギーを吸収することで揺れを軽減する方法 ・ダンパーと呼ばれる装置で衝撃を吸収する |
2013年11月に施行された「改正耐震改修促進法」により、古い倉庫や工場は、耐震診断をして建物の耐震性を確認することが義務付けられました。耐震診断とは、現在の耐震基準で建物の耐震性を確認することを指します。
耐震診断の対象となるのは、1981年6月以前に建てられた「旧耐震基準」の建物です。1981年6月以前に建てられた建物や老朽化が進んでいる建物は、耐震診断を受けて安全性を確認しましょう。
室内の地震対策
資材や機材が保管されている工場・倉庫では、室内でも地震災害による被害の可能性があります。具体的には、従業員の避難経路が閉ざされたり落下物による怪我が起きたりする被害です。
工場・倉庫の室内の地震対策には「避難経路の確保」「防災グッズ・避難グッズの備蓄」があげられます。詳しく見ていきましょう。
避難経路の確保
地震発生時は、従業員の安全確保が最優先です。地震災害に備えて、工場や倉庫内の避難経路を確保しておきましょう。
避難経路の確保には、以下のポイントを意識してください。
・通路に障害物を置かない
・定期的に避難訓練を実施する
・非常口や避難経路を明るくする
・転倒の可能性があるものをビスやネジで固定する
・ものが落下しないように落下防止ネットを使用する
災害時に慌てないよう日頃から避難経路を明確にし、従業員への周知を図ることも重要です。
防災グッズ・避難グッズの備蓄
地震発生直後から数日間は、ライフラインの復旧に時間がかかることがあります。従業員が数日間、工場や倉庫で過ごすことを想定し、防災グッズや避難グッズを備蓄しましょう。
たとえば、以下のアイテムを揃えることをおすすめします。
・飲料水
・食料
・簡易トイレ
・懐中電灯
・ランタン
・救急箱
・モバイルバッテリー
・ラジオ
食品の場合は賞味期限があるため、定期的にチェックや交換を忘れないようにしましょう。大規模な地震の際、従業員が一定期間事業所内で生活できるよう、水や食料は多めに備蓄しておくことが大切です。
工場・倉庫の地震対策はBCP対策も入念に
BCPとは「Business Continuity Plan」の略称で、事業継続計画のことを指します。災害時は製造ラインに影響が出たり、従業員の安全確保が難しかったりと、さまざまな問題から事業を続けるのが困難になる可能性があります。
BCP対策をしないと、機械・設備の故障で費用が多くかかるうえ、製品の生産ができなくなるかもしれません。結果的に売上が立たなくなり、事業の存続が危ぶまれる状況に陥ります。
地震災害の後も工場を存続させるには、安全確保のための地震対策とあわせて、BCP対策に力を入れることが大切です。
工場・倉庫の地震対策は解決ファクトリーにご相談ください
工場や倉庫の地震対策は、建物の耐震補強以外にも、再稼働に向けて事前に備えておくことが大切です。
ここでは、地震の際に従業員や設備を守るための製品をご紹介します。
屋内での落下事故から身を守る「一時避難用ボックス」
重い荷物の多い工場や倉庫を想定して作られた、耐衝撃高強度構造の一時避難用ボックスです。サポートラック1台分のスペースで設置可能。狭い施設でも導入しやすいアイテムです。
工場の再稼働を助ける「非常用大型発電機」
災害時に電気が止まると、工場が緊急停止してしまいます。すぐに再稼働し、事業の継続・早期復旧をするためにも、カスタマイズ可能な大型の発電機を導入しませんか?
緊急避難時の逃げ遅れを防ぐプッシュオープンバー「パニックバー」
緊急時にパニックを起こし、従業員が逃げ遅れる危険を防ぐパニックバー。ワンアクションでドアを開けられるので、素早く外部に避難できます。
排泄物を下水道管に直接流す「災害用仮設マンホールトイレ
マンホールの上に便座を設置し、排泄物を直接下水道管に流すタイプの災害対策用トイレです。高齢者や車椅子の方も利用でき、機能面でも優れています。
工場や倉庫の地震対策に関するよくある質問
工場・倉庫の地震対策に関するよくある質問を集めました。
BCP対策は義務ですか?
BCP対策は義務ではありません。しかし工場や倉庫の事業継続性を確保し、社会的な責任を果たすためにも策定をおすすめします。電気やガス、水道などの業種では、事業継続計画を定めることを強く推奨されています。
地震発生時、工場や倉庫ではどのような行動をすればいいですか?
地震が発生したときは、落ち着いた行動を取ることが大切です。従業員同士で連絡を取り合い、安否確認を行いましょう。
緊急時に適切な行動を取れるかどうかは、日頃から避難経路を確認したり、防災訓練を行ったりすることで決まります。もしものときに備えて、工場内で対策を取ることが必要です。
工場や倉庫の耐震補強は必要ですか?
新耐震基準(1981年6月1日)以前に建てられていて、耐震診断で問題があると認められた工場・倉庫は耐震補強工事が必要です。
耐震補強工事は費用がかかりますが、地震発生時に建物の倒壊を防ぎ人命や財産を守るためにも必要な工事です。
まとめ
地震が発生すると、工場や倉庫では建物倒壊の危険とあわせて、室内で起こる事故の危険があります。たとえば落下物や機材に潰されて起きる怪我などです。
地震時に事故を起こさないためにも、日頃から避難経路を確認したり耐震診断を受けたりして備える必要があります。
また、地震後に再稼働までスムーズに行うためにBCP計画(事業継続計画)を策定しておくことも大切です。
解決ファクトリーでは、防災対策の知識を持った専門家がBCP計画(事業継続計画)の策定をお手伝いする「BCP/事業継続力強化計画策定サポート」をご用意しています。
工場・倉庫の地震対策や地震が起こった後の再稼働に不安を感じているなら、無料で事業継続力をチェックも可能です。まずはお気軽にご相談ください。