省エネ対策は、省エネ法の遵守や地球温暖化などの環境問題だけでなく、コスト削減や企業のブランド価値を高める上で、大きな課題のひとつです。
ですが、省エネ対策への取り組みは初期費用がかかる、導入するメリットが不明確などの理由で、実現に至らない企業も少なくありません。
そこで今回は、工場の省エネ対策の考え方と、どんな実践方法があるのかをご紹介します。
目次
工場における省エネ対策が重要な理由
収益改善は企業の大きな課題です。収益を改善するために必要なポイントのひとつが、「売上高を今よりも増やす」ということです。と同時に取り組むべき施策として「コスト削減」があります。
とはいえ、現状から売上高を増やすには「投資」や「人材」が必要です。もちろん時間も必要であり、リスクも伴うため、実現には高いハードルがあります。
一方でコスト削減には、企業努力と意識改革でリスクを負わずに着手できる施策が数多くあります。
持続可能な社会を担う責任が問われる時代において、企業が優先して取り組むべき施策が「省エネ対策」なのです。
省エネ対策はコスト削減に貢献度が高い
多くの生産設備が稼働する工場やプラントなどでは、設備を稼働させる以外に、労働環境を整えるための空調や照明設備、防災・セキュリティなどのシステムを動かすなど、多くのエネルギーを消費し、ランニングコストが発生します。大量のエネルギーを使うということは、CO2排出量も比例して多くなります。
製造業で省エネに取り組むということは、コスト削減だけでなく、地球を取り巻く環境問題にも少なからず貢献することにもなります。
地球温暖化や大気汚染、水質汚染など世界共通の重要な課題である環境改善への取り組みは、これからの企業のミッションでもあり、当事者意識を持って省エネ対策を実践していくことで、コスト削減を達成することができるといえます。
製造現場における省エネ対策のメリット
設備の寿命を延ばすことができる
工場など製造業の使用電力比率は、「生産設備」が83%、照明や空調などの「一般設備」が17%となっています。(資源エネルギー庁調べ)
「定期的なメンテナンス」や「使っていない照明は消す」など、基本的な行動も工場の省エネ対策として有効です。
例えば、油圧装置の作動油は使用していると不純物が混じるようになり、フィルタの目詰まりの原因になるなど機械に負担をかけます。定期的なメンテナンスを行うことで、早期に問題を解消すれば、エネルギー効率が高まるだけでなく設備の寿命も長くなります。
エネルギー使用量の多い生産設備の省エネ対策に取り組むことが有効と思われがちですが、機械の入れ替えやシステムの変更が伴うなど、実行するには莫大なコストがかかります。
短期的な達成目標、中長期的なゴールを定めた上で実行するのが現実的でしょう。
ランニングコストが削減できる
省エネ性能が高い設備に刷新することによってランニングコストが削減できます。
初期費用がかかりますが、長期的な観点では新しい設備の導入は有効です。
下記のように、省エネ対応の設備を導入する場合、国や地方公共団体の助成金・補助金などが活用できます。
省エネルギー投資促進に向けた支援補助金「省エネルギー設備への入替支援」
事業者の更なる省エネ設備への入替を促進するため、「先進設備・システム」、「オーダーメイド型設備」の導入を支援していますます。
また、汎用的な設備(ユーティリティ設備・生産設備)については、簡易な手続きで申請可能な申請区分(指定設備導入事業)も用意されています。
令和3年度先進的省エネルギー投資促進支援事業の概要
企業のイメージアップになる
「省エネ法」によって、経済産業省 資源エネルギー庁では、事業者クラス分け評価制度を導入しています。
省エネ法の定期報告書等の内容を確認し、事業者をS(優良事業者)・A(更なる努力が期待される事業者)・B(停滞事業者)へクラス分けし、Sクラスの事業者は、優良事業者として経済産業省のホームページで公表されます。
また、省エネ対策は取り組み内容や成果を自社でPRすることで、企業の信頼性の向上にもつながります。
事業者クラス分け評価制度(SABC評価制度)
次に、工場全体の省エネ対策をいくつかご紹介します。
それぞれの施策がもたらす効果は異なりますが、まずは実践して省エネによるコスト削減の効果を得ることで、「省エネ対策」を継続し、次の取り組みへ繋げていくことが大切です。
省エネ対策1|新電力の導入
「新電力」とは電力自由化により新規参入した電力会社のことです。
新電力の導入によってコストをかけずに、省エネ対策が実現します。
ただし、新電力と大手電力会社とどちらの電気料金が安いかは一律には判断できません。
地域によって参入している新電力も異なりますので、十分に価格を比較してみましょう。
電力会社選びは、価格の低さだけに注目するのではなく、安定性や将来性も見極めて選ぶことも重要で、専門家のアドバイスを受けるなど、慎重に行いましょう。
すでに新電力に切り替えている工場でも、競争力のある新電力の新規参入などもありますので、見直しは必要です。
省エネ対策2|最大需要電力(デマンド)のコントロール
日本には最大需要電力(デマンド)を自動的に契約電力とする独特の料金体系があります。
これに対応して、電気基本料金を削減する仕組みとして最大電量を監視するシステムなどが開発されています。
例えば、CPU搭載の電子ブレーカー®を使用した場合、通常のブレーカーでは不可能だった最適な定格電流の設定を可能にします。低圧電力の契約を負荷設置契約から、より契約容量の小さい主開閉器契約に変更できるので、大幅な電気基本料金の削減を実現します。
このような仕組みを活用すれば、設備内容や電気使用状況を変えずに、省エネ=コスト削減が実現します。
省エネ対策3|空調の温度設定
環境省では、オフィスにおいて冷房時の温度設定を1℃高くすることで約13%(約70W)、暖房時の温度設定を1℃低くすることで約10%の消費電力の削減になると報告しています。
このことから、工場などの大規模な施設で空調の温度設定を細かく規定すれば、高い省エネ効果が期待できると予想されます。
同じく環境省によると、地球温暖化対策のための省エネ対策として、「冷房時の室温を28℃」、「暖房時の室温を20℃」を理想として推奨しています。
これを基準として、現場で作業をする従業員にとって快適な温度であるかどうかも加味した上で、適切な「省エネ温度設定」決めて、コントロールしてみましょう。
省エネ対策4|照明の管理
照明は空調に次いで電気使用量が多い設備です。
照明の電力を下げる方法
- 工場内の照明は必要最小限の点灯にする。
- 始業前、休憩中、終業後の時間帯によって、使うべき照明を明確に分ける。
- 明るすぎる場合は照明のワット数を下げるなど、適切な照度を見直す。
- 照明のLED化で、消費電力を約85%削減(白熱灯と比較した場合)できる。
- こまめな点灯スイッチのON /OFFも、地味ですが習慣化すれば省エネ効果がある
省エネ対策5|待機電力を減らす
製造工程では必要なエネルギーを効率よく稼働させることが、生産効率の面からも重要です。
アクティブでない工程で使用する生産機械をスタンバイモードにしておくことは、エネルギーの節約になりますが、一歩進んで、生産装置の連続走行時間の短縮やアイドリング時間の短縮して、少しでも待機電力削減の試みを行うことが大切です。
待機電力を下げる方法
- 工場が稼働していない時間帯には、使用しないOA機器の主電源をオフにする
- エアコンやガス給湯器などの電源オフを実施する
- 自動販売機などの台数削減や省エネモードでの稼働
など、生産危機以外の待機電力も見直しましょう。
休日や夜間の消費電力がそれほど下がらない場合、それが自動運転によるものか、待機電力か、調査した上で、不必要の待機電力があれば削減することが「省エネ」になります。
省エネ対策6|5S活動の実施
職場環境を整えるための5つの要素である「5S活動」の徹底も、省エネ対策には必要です。
- 整理:必要なもの不要なものを分別し不要物は処分する。
- 整頓:必要なものを使いやすいように置き場を決める。
- 清掃:作業場周辺の清掃、メンテナンスを行う。
- 清潔:「整理」「整頓」「清掃」を意識して汚れのない状態を維持。
- しつけ:ルールや規律を守るのが皆の習慣になるようにする
それぞれの環境に応じて、省エネの観点からも上記を基に具体的行動指針を決めておきましょう。
そして、それを行う必要があるのかを全員が理解し、取り組むことで「徹底」が図れます。
自分たちの働く環境を常に最善・最良の状態に保つ努力をする「 5S活動」で、省エネ対策としてだけでなく機械の長寿命化にも繋がるだけでなく、先にも挙げた省エネの施策を、スムーズに実施できるような体制が出来上がります。
まとめ
- 収益の改善には売上高を上げることとコストの削減が欠かせない。
- 省エネによるコスト削減は、リスクも少なく企業が優先して取り組むべき施策である。
- 省エネ対策は、業種に関わらずコスト削減に貢献度の高い要素である。
- 省エネ対策で、設備の長寿命化、ランニングコスト削減、企業イメージのアップができる。
- 新電力の導入など、電気代の見直しが省エネにつながる。
- 5S活動の推進による環境整備と行動変容が、継続したな省エネ施策の推進につながる。
今回は、工場の省エネ対策とコスト削減についてお伝えしました。
工場〜製造業にとって、省エネ対策への取り組みは、コスト削減はもとより、CO2削減など地球環境問題への取り組みにも繋がります。
自社の実績アップだけでなく、社会的信頼度の向上の観点から、企業全体での省エネ対策への取り組みは、今後ますます優先度が高くなると言えそうです。
解決ファクトリーでは、省エネ対策に役立つシステムやグッズ、また、プロの目でコスト改善を分析するサービスも提供しています。今後の「省エネ対策」の推進に、是非お役立て下さい。
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