参考にしたい!工場の安全衛生活動への取り組み事例

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すべての事業者(事業を行う者で労働者を使用するもの)は、労働者の安全・健康を確保するため、国が定めた労働安全衛生法に従い、さまざまな措置を講じる義務があります。これを怠れば、労働環境の悪化を招くだけでなく、法律により罰則を受ける場合もあります。
特に、工場や倉庫など、多くの従業員が働く現場では、常に現状を把握しつつ、安全衛生活動に取り組まなければなりません。
今回は、この「安全衛生活動」について、他社がどんな取り組みをしているのか、いくつかの事例をご紹介します。

労働安全衛生法とは?

労働安全衛生法(安衛法)は、「職場における労働者の安全と健康の確保」や「快適な職場環境の形成促進」を目的として1972年に制定された法律です。

  • 労働災害の防止のための危害防止基準を確立すること
  • 責任体制を明確化すること
  • 自主的活動を促進すること

など、総合的・計画的に推進することで、目的の達成を図るものです。
この法律を主体に、労働安全衛生法施行令で細かな部分が規定されています。

出典:「改正労働安全衛生法平成18年4月1日、施行」(厚生労働省)より加工作成
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/roudou/an-eihou/060401.html

製造業の「安全衛生活動」取り組み事例

厚生労働省が認めた安全衛生優良企業の中から、製造業にける安全衛生活動の事例をご紹介します。

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安全衛生優良企業とは?

厚生労働省では、平成27年6月より、「安全衛生優良企業公表制度」の受付を開始しました。さらに、労働者の安全や健康を確保するための対策に積極的に取り組み、高い安全衛生水準を維持・改善している企業を、「安全衛生優良企業」としての認定しています。
この認定を受けるためには、過去3年間労働安全衛生関連の重大な法違反がないなどの基本事項に加え、労働者の健康保持増進対策、メンタルヘルス対策、過重労働防止対策、安全管理など、幅広い分野で積極的な取組を行っていることが求められます。

1 トヨタ自動車株式会社

安全人間づくりの教育

体感教育を中心にして、現場の作業で危ないものを危ないを思い、安全を考えることのできる人材育成を目指すことを狙いとして、「保全人材育成道場」を設置。
考える・学ぶ・感じるを道場の方針とし、安全道場、基本技能道場、設備基本技能道場、オフライン設備技能道場など4つのカテゴリーについて、マンツーマンの教育〜検定を実施している。
さらに、「安全人財センターの取り組み」として、一人ひとりの安全意識を変える活動を行なっている。

事務・技術員一人ひとりの安全能力向上

個々の安全能力の見える化と、相互啓発による能力向上を通じた、事務・技術員向け「自分の身は、自分で守れる人」の育成を狙いとして、

  • ① 安全人間づくり活動
  • ② 危険予知能力向上
  • ③ 過去災害例の活用

について全社ツールを作成し、活用している。

コミュニケーション活性化

困りごとを共有共感し、管理監督者からメンバー一人ひとりが本気になって解決に導くことにより、職場の一体感を生み出し、安全マインドや職場力、競争力を向上させることを狙いとして、

  • ① ヒヤリハットなど安全の情報共有
  • ② ゼロ災達成だるまや、未経験者への腕章、安全の約束手形などの工夫
  • ③ 共感「双方向コミュニケーション」「S(ショート)KYシートの活用」の徹底
  • ④ COMシート(コミュニケーションシート)活用による現場の改善

など、コミュニケーションの活性化を推進している。

2 パナソニックエコソリューションズ池田電機株式会社

社員安全教育

危険体感ルームを設置し、全従業員を対象に、年1回の安全教育を実施。
また、新入社員や派遣社員の雇い入れ時には随時実施している。

安全衛生の確認

社内に設置した安全衛生委員会の各分科会にて、パトロールを実施している。

従業員の健康促進

健康促進を目的として、従業員全員参加のAJTA大会 (全日本玉入れ協会)を実施している。

3 メルテック株式会社

安全衛生取組にあたり、安全優先宣言を策定した。

安全優先宣言

  • ① 安全が第一であり、利益、効率その他のことは第二である。
  • ② トップは安全のために率先して行動し、積極的に安全対策を講ずる。
  • ③ 従業員は全員安全のプロフェッショナルとなり、常に安全最優先で行動する。

安全最優先の確認

年に2回実施する、全員参加による安全大会で、KY促進研修 や過去災害事例研究を行っている。

ヒヤリハットの共有

提出されたヒヤリハット報告書に関係者が目を通し、所属課長のコメントを入れたものを掲示し従業員に周知。また、ヒヤリハット報告書の提出状況をグラフ化して、誰がどこでどんな体験をしているかを明確にしている。

危険箇所の見える化

歩行区分を明示したり、縁石や出入り口の塗などの工夫で、転倒防止や車両との距離を確保。また、事務棟の階段にも歩行区分を設け、安全を確保した。

4 株式会社IHIエアロスペース

安全衛生管理

  • ① リスクアセスメント(リスク特定、リスク分析、リスク評価を網羅するプロセス)を中心とした安全活動の実施。
  • ② 安全衛生ハンドブックの作成と配布による安全ルールの徹底と意識の向上。
  • ③ 「危険度体感考場」エリアを構築し、危険の擬似体験により安全意識の向上を図る。

交通安全

  • ① 新入社員向けにJAF交通安全講習会を実施し、運転技術の向上をはかっています。
  • ② 私有車通勤者全員が、自身の通勤ルートをリスクアセスメントし、交通安全宣言を行うことにより事故撲滅を目指しています。

健康管理

  • ① 健康チャレンジを推進し、従業員個々人が健康増進を図っています。
  • ② ヘルスアップセミナーを開催し、専門講師による健康増進にアプローチしています。
  • ③ 社員食堂とのタイアップによる、サラダバイキングで、生活習慣病予防へのきっかけづくりを提供しています。

出典:「安全衛生優良企業の取組事例」(厚生労働省)より加工作成
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000075574.html

安全衛生管理・活動の進め方

各企業によって、安全衛生活動の内容は様々ですが、ここで簡単に、進め方の流れやポイントについて簡単に見ておきましょう。
先の、安全衛生優良企業の事例も、下記の流れで実施されています。

1.安全衛生管理・活動に、事業場全体で取り組む

トップがやる気を見せる
風通しのよい職場をつくる

2.安全衛生活動のための体制づくり

安全衛生の中心となる担当者を決める
委員会で労働者の意見を聴いて相談する

3.安全衛生管理・活動のための仕組みづくり

安全衛生のためのルールをつくる
安全衛生教育を実施
危険源を見つけて、取り除くための仕組みをつくる
活動は計画的に行う

4.安全衛生活動を実施する

5.活動の実績を振り返る

まとめ

  • 安全衛生活動は、労働者の安全・健康を確保するために、事業者が行わなければならない法律で定められた義務です。
  • 安全衛生優良企業では、安全衛生活動をパートタイマー・期間従業員などを含めたすべての労働者に対して、繰り返し実施し、自ら考える機会を設けています。

今回は、製造業における安全衛生活動の取り組み事例を中心にお伝えしました。
活動には、安全衛生管理の基本を把握した上で、自社の事業内容に合わせた総合的な計画が必要です。
単なる法令遵守だけではなく、企業価値を高め、安定した経営を行うためにも、一刻も早い取り組みが必要です。
次回は、安全衛生管理の基本と、安全衛生活動の実施のポイントについてお伝えします。

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