熱中症が起こりやすいのは、夏場の暑い日だけとは限りません。梅雨の晴れ間や梅雨明けの急に暑くなったときにも、熱中症は多くみられます。この時期は、まだ暑さに慣れていないため、体温をうまく調節できないためです。
そのため、工場の暑さ対策は本格的な夏がやってくる前からやっておくのがおすすめです。また、夏の工場の暑さは従業員の作業効率を下げる可能性もあります。
そこで、この記事では、工場や倉庫、事務所での暑さ対策と熱中症を防ぐ方法をご紹介します。
目次
- 1 工場・倉庫はなぜ暑い?暑さ対策を行わなくては行けない理由
- 2 工場・倉庫の暑さの原因は?
- 3 工場・倉庫の熱中症・暑さ対策(知識の共有・個人対策)
- 4 工場での暑さ対策|熱中症が発生しやすい状況を知っておく
- 5 工場の暑さ対策|熱中症警戒アラートを確認する
- 6 「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施中(5月1日から9月30日まで)
- 7 工場の暑さ対策|熱中症の症状を知っておこう
- 8 工場の暑さ対策|熱中症の応急処置
- 9 工場だけでなく個人でもできる熱中症対策
- 10 工場・倉庫の暑さ対策(空調設備)
- 11 製造業・運送業における熱中症による死傷者は全体約5割
- 12 まとめ:工場の暑さ対策は早めに始めて熱中症を防ごう
工場・倉庫はなぜ暑い?暑さ対策を行わなくては行けない理由
・熱を出す機械がある
・熱中症にリスクがあるため
・生産性が落ちてしまうため
・年々熱くなっているため
熱がこもる構造になっている
工場・倉庫内が高温になる一番の原因は屋根や壁です。
特に工場や倉庫によく使われる折板屋根は金属製で、直射日光を受けることで表面温度が70℃近くまで熱せられることがあり、一般的な住居と比べて屋内であっても輻射熱により体感温度が高くなりやすいという特徴があります。
製造工程で熱源がある
外からの熱だけでなく、内部で発生する熱の影響も受けます。
たとえば、製造工程で火や熱湯を使う場合には、工場の中の温度も上がります。また、機械設備は運転するたびに熱を発生させてしまうため熱がこもりやすい状態になってしまうのです。
工場の外部と内部から熱が発生するため、工場の中は高温になってしまいます。
熱中症にリスクがあるため
工場内では、作業を行うため動いているケースが多くあります。動いているときに、工場内の温度が高いと熱中症を引き起こす原因になります。
また、熱中症のリスクを軽減させるためには、温度だけでなく湿度への考慮も必要です。実際、湿度が65%を超えると熱中症の危険性が高まります。
生産性が落ちてしまうため
工場で作業効率を維持するためには、快適な室温を維持する必要があります。
実際、空気調和・衛生工学会の調査では、平均室内温度が25℃から26℃に上がると1.9%程度作業効率が低下しています。さらに25℃から28℃まで上昇すると作業効率は6%低下するのです。
生産性を保持するためには、快適な室温の維持が大切となります。
年々暑くなっているため
気象庁によると日本の平均気温は1990年代以降上昇傾向にあり、2020年の平均気温が1898年の観測開始以来、過去最高を記録しました。
特に近年、過去30年間の平均気温との差は高くなっている傾向があります。
1位:2020年(+0.65℃)
2位:2019年(+0.62℃)
3位:2021年(+0.61℃)
4位:2022年(+0.60℃)
5位:2016年(+0.58℃)
2022年夏は、東・西日本を中心に記録的な高温となりました。平均気温偏差は、6月下旬には東日本で+4.0℃、西日本で+3.2℃、7月上旬には北日本で+3.2℃となり、気象庁が公開した「気候変動監視レポート2022」によると、1946年の統計開始以降1位の記録を更新しています。
日本で最も北側に位置する北海道においても、確実に夏の気温が上昇しています。
出典:気象庁「気候変動監視レポート2022」
工場・倉庫の暑さの原因は?
工場・倉庫内が高温になる一番の原因は屋根や壁です。
特に工場や倉庫によく使われる折板屋根は金属製で、直射日光を受けることで表面温度が70℃近くまで熱せられることがあり、一般的な住居と比べて屋内であっても輻射熱により体感温度が高くなりやすいという特徴があります。
さらに建屋が広い工場や倉庫は天井が高くて空調が効きづらかったり、換気システムのついていない工場・倉庫では窓や壁付けの換気扇から建屋中央部分まで距離があることで中央部分に熱い空気が滞留してしまいます。また製造過程で火や熱湯使うことも多く、非常に熱がこもりやすい危険な環境となっています。
工場・倉庫の熱中症・暑さ対策(知識の共有・個人対策)
そんな熱中症リスクの高い工場・倉庫で従業員の健康を守るために、個人レベルでできる対策と工場・倉庫の空調設備面から取るべき対策をご紹介します。
まずは熱中症が発生しやすい状況と熱中症が発生した場合の対応を管理者だけでなく従業員全員が把握するようにしましょう。
工場での暑さ対策|熱中症が発生しやすい状況を知っておく
熱中症が発生する要因は「環境」と「からだ」と「行動」の3つです。以下のような状況が発生する場合には、熱中症への警戒が必要です。
<環境要因>
気温が高い、湿度が高い、風が弱い、急に暑くなった
<からだ要因>
激しい労働や運動によって体温が高温になる、暑い環境に体が十分に対応できない、二日酔いや寝不足、高齢者や肥満、糖尿病や精神疾患の持病を持っている
<行動要因>
激しい筋肉運動や長時間の屋外作業、水分が補給できない状況
工場の暑さ対策|熱中症警戒アラートを確認する
環境省の熱中症予防情報サイトでは暑さ指数に基づいて都道府県別の「熱中症警戒アラート」が発表されています。
ホームページやメール配信サービスを利用して、発表状況を確認し、アラートが発令されている場合には従業員に共有して普段以上の熱中症予防を実践するようにしましょう。
環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症警戒アラート」全国の発表状況はこちらから >
「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」実施中(5月1日から9月30日まで)
厚労省では、職場における熱中症予防対策徹底を図るため、4月の準備期間から期間ごとの実施事項をチェック項目で提示しています。
事業所内で実施状況をチェックして、例年最も死傷者の多い7月に備えるようにしましょう。
工場の暑さ対策|熱中症の症状を知っておこう
以下のような症状がある場合には熱中症を発症している危険性があります。
管理者はもちろん、従業員同士でも注意しあうようにしましょう。
症状① めまいや顔のほてりがある
症状② 筋肉痛や筋肉のけいれん、手足がつる
症状③ 体のだるさや吐き気、頭痛がある
症状④ 汗が止まらない、または暑いのに汗が出ない
症状⑤ 体温や脈拍が高い
症状⑥ 呼びかけに反応しない、真っ直ぐ歩けない
症状⑦ 水分が摂れない
このほかに、他人から見てわかる症状もあります。
症状①イライラしている
症状②呼びかけに応じない
症状③フラフラしている
症状④ボーっとしている
出展:厚労省「中小企業の事業主、安全・衛⽣管理担当者・現場作業者向け働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」
工場の暑さ対策|熱中症の応急処置
応急処置の方法を順番に紹介します。
1.まずは涼しい場所へ移動し、体を冷やして体温を下げるようにします。体を冷やす場合には、首・わきの下・太ももの付け根を集中的に冷やしましょう。
2.自力で水分・塩分が摂取できるのであればスポーツドリンクや経口補水液を摂取し、そのまま安静にして十分に休息を取るようにしてください。
3.自力で水分・塩分が摂取できない場合や、水分・塩分を摂取して休息を取っても回復しない場合には、医療機関を受診しましょう。
4.意識が朦朧として呼びかけに反応がない場合には、すぐに救急車を呼んでください。
工場だけでなく個人でもできる熱中症対策
ここからは、個人でできる熱中症対策を紹介します。また、個人で準備するだけでなく、職場で準備して従業員に対策してもらうのにもおすすめな方法です。
・健康管理
・衣服
それぞれ詳しく紹介します。
水分補給
水分補給は約20分毎のどが渇く前にコップ1杯(150~200ml)程度、0.1~0.2%の食塩(ナトリウム40~80mg/100ml)と糖質を含んだスポーツドリンクの接種が推奨されています。なお一度に大量の水を摂取すると、体内の電解質バランスを崩して体調不良を引き起こしてしまうことがあるので注意が必要です。職場全体でも作業中にこまめに水分補給ができるような環境整備を行いましょう。
健康管理
二日酔いによる脱水や睡眠不足・栄養不足は、熱中症を発症する要因になるといわれています。
作業前日には飲酒は控え、普段からバランスの良い食事と7時間以上の十分な睡眠を取って健康管理を行いましょう。
衣服を工夫する
吸水速乾や接触冷感素材を使用したインナーで体感温度を下げたり、保冷剤付きベストや空調服などで衣服内部に熱がこもらないように工夫をすることも、従業員一人ひとりの健康を守ることに繋がります。
工場・倉庫の暑さ対策(空調設備)
工場や倉庫では、空間が広いために冷暖房の効率が悪いと悩んでいる職場も多いのではないでしょうか。
工場や倉庫の設備面でできる暑さ・熱中症対策は以下の4つです。
・工場用ミストファン
・移動式工場用スポットクーラー「ヒエスポ」
・金属・折板屋根専用遮熱パネル「ぴたっとECOパネル」
それぞれおすすめの理由や特徴を紹介していきます。
大型シーリングファンeneFAN(エネファン)
工場や倉庫の広い空間の空気を循環させたい場合には、シーリングファンの設置が有効です。
特長
- 体感温度を下げる汗が蒸発する際に熱を奪う「気化熱効果」により体感温度を下げることで、冷房による体への負担をかけずに熱中症を予防します。
- 省エネ1.5kWの消費電力で、約1000㎡を超える面積をカバー。工場や倉庫などの大空間にはスポットクーラーよりも効率的に空気を循環させることが可能です。
<現地調査無料!>詳しくは、大型シーリングファンeneFAN(エネファン)商品詳細ページをご覧ください >
「工場用ミストファン」
- 屋外作業時に暑さ対策や熱中症対策がしたい
- 簡単に持ち運べるものがいい
とお悩みの方には、「工場用ミストファン」がおすすめです。
特長
- 「約2℃~4℃」温度を下げるミストの気化熱効果で「約2℃~4℃」温度を下げます。高圧式の細かなミストなので床や機材をが濡らしません。
- 持ち運びラクラク持ち運びが楽な軽量コンパクトなタイプ(約16.2kg)。状況に応じて設置場所を変えられます。
<デモ機貸出・現地調査無料!>詳しくは、「工場用ミストファン」商品詳細ページをご覧ください >
移動式工場用スポットクーラー「ヒエスポ」
- 費用の問題でエアコンの増設はできない
- 人が集まるイベントなどスポットで使いたい
とお悩みの方には、移動式工場用スポットクーラー「ヒエスポ」がおすすめです。
特長
- 配管工事不要移動も簡単なので、使いたい場所に設置が可能です(電源:三相200Vのため電気工事が必要な場合があります)。
- 防水雨や水のかかるイベント会場でも使用が可能です。
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金属・折板屋根専用遮熱パネル「ぴたっとECOパネル」
- エアコンの電気代が高く光熱費を削減したい
- 工場・倉庫内の暑さで生産効率が下がっている
とお悩みの方には、金属・折板屋根専用遮熱パネル「ぴたっとECOパネル」がおすすめです。
特長
- 遮熱効果が抜群に高い
太陽からの直射日光を反射させ、工場への熱流入を大幅に削減。また金属・折板屋根に日陰ができ、何もしない場合と比べて表面温度に-26度の変化が見られました(※表面温度が58.4℃の場合)。 - ランニングコストがかからない
屋根に設置するだけ。100㎡であれば2日間、500㎡であれば5日間程度の短期間で、営業を停止することなく施工が可能です。
詳しくは、金属・折板屋根専用遮熱パネル「ぴたっとECOパネル」商品詳細ページをご覧ください >
製造業・運送業における熱中症による死傷者は全体約5割
厚労省の調査によると、職場での熱中症による死傷者数は2022 年は827 人となり、うち死亡者数は 30 人となっています。
熱中症による業種別死傷者数は、建設業179件、製造業145件、運送業で129件(2022年確定値)となっており全体の約5割を占めています。2018年以降の業種別の熱中症の死傷者数をみると、建設業が最も多く、次いで製造業で多く発生しています。このことから、熱中症は屋外作業で発症するとは限らないことが分ります。
また熱中症による死亡事例からは、猛暑日とされている気温35℃以下であっても屋内外で熱中症による死者がでていることが分ります。
さらに熱中症による二次災害では、意識を失って転倒して頭部や肩を強く打った事例や高所から墜落した事例、車両の運転中に熱中症を発症し交通事故につながった事例などが見られました。
出典:厚労省「令和4年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)」
【2020 年の熱中症による死亡災害の事例】
<気温31.2℃/40代>
産業廃棄物の中間処理場において、屋外で不燃物の分別作業に従事していたが、終業時刻後になっても事務所に戻ってこなかった。
そのため、上司が探しに行ったところ意識がない状態で発見され、病院に搬送されたものの、翌日に死亡した。
<気温32.0℃/30代>
事業場敷地内にて、荷をパレットに乗せる作業をしていたところ、被災者の様子がおかしいと感じた同僚が休憩を指示した。被災者は休憩室に向かったが、その途中で倒れ、救急搬送されたが死亡した。
<気温32.8℃/60代>
午前中よりコンクリート製品運搬・結束・梱包作業のため、炎天下の下でフォークリフトの運転業務に従事していた。昼休憩後、時間になっても職場へ戻らなかったため同僚が捜した所、駐車場の端でうつ伏せの状態で倒れている所を発見し、救急要請したものの、救急隊員が到着したときにはすでに死亡していた。
【2021 年の熱中症による死亡災害の事例】
<気温29.9℃/10代>
解体作業中、現場主任者が、被災者の動きが鈍く怠そうな様子であることに気がついたため、現場の休憩所で休憩させた。
約10分後、現場主任者が被災者に声をかけて体をゆすると倒れこみ、動けない状態となったため救急搬送したものの、数日後に死亡した。
<気温31.0℃/40代>
選果場内で選果作業を行っていたところ、意識不明となり倒れ、呼びかけにも反応がなく、医療機関に搬送中に心肺停止状態となり、死亡した。
なお、被災者は当該作業に従事し始めて2日目であった。
<気温32.7℃/70代>
事業場資材置場内で型枠資材の整理作業を終え、敷地内の休憩室に戻ろうとした際、脱水症状を発症したため、同僚が休憩室内で給水等の手当を施したところ、被災者は快方に向かったため帰宅したが、翌日容態が急変し、救急搬送されたものの死亡した。
【2022 年の熱中症による死亡災害の事例】
<気温35.5℃/60代>
被災者は 8 時から木造2階建家屋新築工事 現場で壁面の左官作業を行っていた。12 時か ら昼休憩をとり、その最中に行方不明となり、15 時頃離れた場所で倒れているところを 発見され、その場で死亡が確認された。
<気温40.0℃/40代>
被災者は 8 時 30 分から派遣先のクリーニング工場において、寝具の仕分け作業に従事し ていた。17 時頃被災者の意識が朦朧となり、 その場でひざまずいたため 、緊急搬送された が、搬送先の病院で死亡した。
<気温31.0℃/50代>
被災者は 13 時から倉庫内で木製の建材を鋼 製の棚から人力で引き抜く作業を行っていたところ、17 時頃に体調不良を訴え、一人で休んでいたが、18 時 30 分頃に過呼吸を引き起こし、緊急搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。
【2023 年の熱中症による死亡災害の事例】
<気温33.9℃/60代>
被災者は7 時からフォークリフトを用いてコンクリート製品の運搬業務に従事していた。15 時の休憩後に作業を再開していたが、フォークリフトが長時間止まっていることに不審に思い、様子を見に来た同僚が倒れている被災者を発見し、救急搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。
<気温33.8℃/30代>
被災者は8 時から 17 時まで自動車吸音材製造工場内にて製造業務に従事していた。被災者は作業中に体調不良を訴えていなかったが、17 時過ぎに自転車で帰宅していたところ、事業場より約 500 メートル先の農道で倒れ、緊急搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。
<気温29.0℃/20代>
被災者は 8 時 50 分頃から板ガラスの切断作業に従事していた。18 時 30 分頃まで適宜休憩を取りながら同業務に従事していたが、上司が被災者の様子がおかしいことに気づき、帰宅を指示した。19 時頃に帰社し、19 時 10 分頃被災者が倒れているところを通行人が発 見、緊急搬送されたが、搬送先の病院で死亡した。
年々暑くなる日本において、工場・倉庫における暑さ・熱中症、空調設備 対策はすぐにでも取り組まないといけない課題なのです。
まとめ:工場の暑さ対策は早めに始めて熱中症を防ごう
工場の暑さ対策として、工場が暑くなる理由や対策について紹介しました。
年々気温が上昇しており、2024年の夏も暑くなると予想されます。また、熱中症は夏本番に起こるだけでなく、梅雨時期などにも起こりやすいので早めの暑さ対策が必要です。
従業員の健康を守りつつ、生産性を向上させるために工場や倉庫としてできる限りの暑さ対策・熱中症対策に努めましょう。
解決ファクトリーでは、「熱中症対策」に関する情報や工場で働く人の悩みに寄り添った様々な情報を発信しています。
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