企業が利益をあげるためには販売数を増やすか、製造にかかるコストを下げるかの二つの方法があります。製造原価を下げたいと思っても、必要なコストばかりでなかなか踏み切れない、という事業者様も多いかと思います。
ここでは製造コストを削減する方法として、特に比重が多い「電気代の削減」について取り上げます。
- 工場における電気代の削減方法
- 具体的な電気代の算出事例
などをご紹介していきます。
目次
平均的な電気使用量の内訳と削減対策の傾向
資源エネルギー庁によると、一般的な工場の電気使用量の内訳は、生産設備が83%、空調9%、照明8%と報告されています。
削減対策の傾向
機械などの「生産設備」を省電力化したら、大きな金額が削減できるように思えますが、全ての生産設備を省エネ対応機器へ交換するとなると、膨大なコスト・時間・労力が必要になるため、あまり現実的ではありません。電球のLED化(交換)や空調の効率化などで光熱費を抑えるなどが一般的で、比較的多くの工場が取り組んでいます。
さらに、2016年4月1日以降は、電気の小売業への参入が全面自由化され、家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。これによって、確実な節電効果がある電力会社への乗り換えが、工場をはじめ事業者及び一般家庭にも浸透し、新たな電気代削減=省エネ施策の主流になりつつあります。
今後、IoT化や自家発電による電力の効率化などが進めば、エネルギーコスト削減にさらに拍車がかかると予測されます。
電気料金の内訳や算出方法
電気代を効率的に削減するためには、現場で使っている高圧電力の費用内訳や仕組みを把握しておく必要があります。
高圧電力の電気代算出方法は、一般家庭の電気料金の計算方法とそう大きく変わりませんので、計算方法を知っておくと良いでしょう。
法人向け高圧電力と一般家庭との違い
月の電気代の内訳は
基本料金(最低料金)+従量料金((電力量単価±燃料費調整単価+再生可能エネルギー発電促進賦課金単価)×使用電力量(kWh))− 割引総額
という構成になっています。
【家庭向けの電気の場合】
契約アンペア数ごとの基本料金または最低料金が設定されています。
【工場などの高圧電力の場合】
30分デマンド値( 30分間の消費電力の平均値)で決定された契約電力によって算出されます。
契約電力は、500kW未満の場合は当月を含む過去1年間の最大デマンド値(最大需要電力)のうち、最も大きかった最大デマンド値(最大需要電力)を契約電力とします。
これをデマンド料金制度といいます。
500kW以上の場合は電力会社と協議して契約電力を決めます。
また、基本料金には力率割引(割増)があり、力率85%を基準として効率の良し悪しが基本料金に反映されます。
この「デマンド値」と「力率」の2点が、電気料金を下げるキーポイントです。
電気代削減の鍵「デマンド値」と「力率」
電気代の内訳については、一般家庭と工場の高圧電力で大きく変わらないことがわかりました。
しかし基本料金や契約電力については違いがあります。
工場の高圧電力では「デマンド値」と「力率」によって電気代が変わってきますので、詳しく見ていきましょう。
「デマンド値」対策で30分あたりの使用電力を下げる
【30分デマンド値とは?】
高圧受電の場合、電力会社がデマンド計(30分最大需要電力計)付きの電子式電力計を取り付けて、電気料金の使用量を計測しています。
この30分毎の平均電力量の記録が「30分デマンド値」です。
月内で1番高い値が、その月の最大デマンド値(=最大需要電力)となり、過去1年間の最も高いデマンド値を基準に契約電力と基本料金が決まります。
【わずか30分の使いすぎに注意】
デマンド計は毎時0分~30分、30分~60分の区切りで数値が割り出されます。
その数値がデマンド値で、契約電力と基本料金の基準になるので、この30分の使いすぎが高額な電気代に繋がります。
過去1年間の最も高いデマンド値を基準に契約電力と基本料金が決まるので、1度高い値が計測されたら1年間は高い契約電力と基本料金になります。
これを防ぐためには、1度に大量の電気を消費する使い方ではなく、30分間で負荷を分散して使用することが有効です。
力率改善で割引率を上げる
「力率」とは、電源から送り出される電力に対して、実際にどれくらい電力が消費されたかを表す数値です。消費されなかった電力は無効電力として、電源と機器の間を行ったり来たりしています。
基本料金に適用される割引に力率割引があります。電力会社としては、電源から送り出したのに使われなかった電力は、未使用の電力なので、請求することができません。そのため、力率割引という制度を設けて、使用者にできるだけ高い力率で電気を使ってもらえるようにお願いをしているのです。
力率が85%を上回る場合は、上回る1%につき、基本料金を割引します。
一方で、85%を下回る場合は、下回る1%につき、基本料金を割り増しします。
つまり、供給された電力を有効に使っているほどおトクになるということなので、コンデンサ(変圧器)による電力の制御、省エネ型のコンデンサの導入などで、力率が85%を超えるよう工夫することが電気代の削減にもつながります。
電力会社の見直し
電力が自由化される以前は、各地域の電力会社(旧一般電気事業者)だけが電気を販売できる仕組みだったので、電気をどこの会社から買うかは選べませんでした。
電力自由化は、特別高圧が2000年~、法人向け高圧電力が2004年~2005年にかけてスタート。
法人向け高圧電力の自由化ののち2016年に小売全面自由化へとなり、低圧区分も含めた全消費者が、電力会社を選べるようになりました。
電力会社によって電気の質は変わる?
電力会社を切り替えるからといって、一時的に電力供給が止まったり電気の質が悪くなることはありません。また、万が一切り替えた電力会社が倒産したり撤退したりしても電気の供給が止まることはありません。電力は水道・ガスとともに、生活に欠かせないインフラなので、契約した会社によって消費者の生活が危険に晒されないよう、消費者保護の仕組みが細かく法律で決められているからです。
万一契約した新電力の会社が何らかの事情で電気の供給ができなくなった場合、もともと契約していた旧一般電気事業者から電気が供給されます。
ただし、元の契約内容にもどるため電気代は新電力と比べて上がりますから、そうならないように信頼できる電力会社を選ぶ、万が一そういう状況になったら早急に次の電力会社を探すなどの注意は必要です。
法人が選べる電力会社は現在では400社以上もあります。
単価が安いことはもちろん、諸条件を比較して、慎重に電力会社を選ぶことが大切だと言えるでしょう。
まずは無駄な電力を使っていないかをチェック!
どのような業種の工場でも、今すぐ現場で実践できる電気代削減方法を3つご紹介します。
①空調効率を改善する
空調の効率アップは、電気代の節約に直結します。
作業効率を重要視するあまり、出入り口が開放されたままになっているケースが多く見受けられます。出入り口にビニールカーテンやエアーカーテンを付けると、空調の効き目が高まります。特に、天井が高い・面積が広い現場では、作業員が働いている場所など、空調を働かせるエリアを限定して対策を行うことで、必要な電力も抑えることができます。
他には、空調の室外機周辺から障害物を取り除くと同時に、室外機を直射日光から守ることでも節電効果が期待できます。
また、電熱シートや断熱塗料などを活用し、電気炉や電気加熱装置など主要設備の断熱性を高めることも、空調コストの削減につながります。
②機器のメンテナンスの実施
生産設備機器のメンテナンスを定期的に実施することで、コンディションを維持し、効率的に稼働させることが可能になります。設備機器のメンテナンスを怠ることで、気づかぬうちに稼働率が低下し、電気代が余分にかかっているケースも少なくありません。
また、定期的なメンテナンスは、不具合を早期に発見し、故障や事故の回避にもつながります。
③LED照明の導入
照明機器の見直しも。電気代の削減方法のひとつです。
夜間でも稼働している工場、また昼間でも全て照明の明かりに頼って作業を行う精密機械工場など、照明の利用率が高い場合は特に見直しが必要です。
照明器具を蛍光灯からLEDに変えることで、電気代の節約へとつながります。
一例ですが、60Wの白熱灯を電球型蛍光ランプに交換した場合、その照明あたりの節電効果は76%、白熱灯をLED照明に替えたケースでは85%の削減になります。LED照明は長寿命なので、頻繁に交換を行う必要もありません。広い施設、照明器具の多く必要な工場では、電気代だけでなく、メンテナンス費用の節約も役立ちます。
まとめ
- 電気代の算出方法は、一般家庭も高圧もほぼ同じである。
- 算出方法は、基本料金(最低料金)+従量料金((電力量単価±燃料費調整単価+再生可能エネルギー発電促進賦課金単価)×使用電力量(kWh))− 割引総額
- 家庭向けの電気は、契約アンペア数ごとの基本料金または最低料金が設定されているが、工場などの高圧電力は30分デマンド値で決定された契約電力によって基本料金が決まる。
- 工場の高圧電力では「デマンド値」と「力率」によって電気代が変わってくる。
- 電力会社の見直しは、電気代削減に大きな効果がある。
今回は、全ての事業者の課題でもある「コスト削減」の中から、電気代の削減に焦点を絞ってお話ししました。
電気代の削減には、まずは工場の高圧電力の電気料金がどのように算出されているのか知り、自社の電気代の現状や推移を把握することが大切です。その上で、電力会社の見直しなど、適切な対策を実施する必要があるようです。
電気代に限らず、省エネ、コスト削減に取り組むためには、まず現状の把握、分析、改善と、細かく多岐に渡った対応が求められます。とはいうものの、人材不足で対策だけに人手や時間を割けない中小企業では、専門家のサポートを活用することもコストカットの実現に役立ちます。
解決ファクトリーでは、コストの削減コンサルティングサービスも行っております。
無償でコスト診断をさせいただきますので、興味のある企業様はどうぞご連絡ください。