BCP(事業継続計画)の基本と計画のポイント

 

最近よく耳にするようになった「BCP」。

これまでの防災対策とどう違うのか?改めて取り組むべき意味とは?など、なんとなく必要だと感じていても「よくわからない」「自社にはまだ早い」と捉えている方も少なくないようです。

今後ますます必要とされるBCPについて、まずはその概要と策定の意義を、正しく知ることから初めていきましょう。

 

 


BCPとは?


 

BCPとは、自然災害やテロ、ウィルス感染などの緊急事態に遭遇した場合に、企業が事業継続や復旧を目的として策定する事業継続計画(Business Continuity Planning)のことです。

1970年代にアメリカやイギリスで事業継続のための手法として関心が高まり、さらに2001年に発生した世界同時多発テロ以降、全世界の企業が事業継続の重要性に着目するようになりました。

日本では、2011年の東日本大震災をきっかけに、BCPに対する意識が高まり、取り組みを開始する事業者も増えています。

具体的には、事業資産の損害を最小限にとどめて、事業の継続や早期復旧を実現するために、平常時に行っておくべき活動や、緊急時における事業継続のための方法または手段などを、予め取り決めておくものです。

もちろん、策定するだけではなく、常に見直しや改善を行い実施可能なものにしておく必要があります。

 

 


なぜ、BCP対策が求められるのか?


 

頻発する大規模災害とリスクの多様化

 

大惨事を引き起こした東日本大震災(2011年3月)以降、2016年の熊本地震や、2017年九州北部豪雨、翌年には西日本豪雨が発生しました。

2019年には台風15号および19号が猛憂を振るうなど、日本国内では大規模な自然災害が毎年のように発生しています。

 

工場経営に降りかかる災害はこれだけではありません。2000年には新型コロナウィルスの感染が世界規模で広がり、パンデミックが引き起こされました。日本でも飲食業、観光業はじめ、製造業も含む多くの事業者がダメージを受け、先の見えない経済不安が引き続き蔓延しています。

他にもテロや国家規模の紛争、大規模情報漏洩など、社会は常にリスクと隣り合わせです。

 

「緊急事態だから仕方がない」が通用しない時代

 

ひと昔前なら、工場や倉庫などが大規模地震や大型台風などで被災して事業が中断しても、取引先企業から免責的な措置が講じられるケースもありました。

ですが、急速なグローバル化が進むとともに、企業間の競争も激化する現代においては「緊急事態だから事業中断は不可抗力」という理論が必ずしも通用するとは限りません。

BCPを策定していて事業継続を実現している競合他社があった場合、取引先の事情により契約が変更になってしまうことも考えられます。

また、新規で取引先企業を選ぶ際に、BCPを策定しているA社とBCPを策定していないB社では「安定した取引」というポイントで、BCPを策定しているA社にアドバンテージがあります。

さらに、事業中断は関係する下請け事業者などにも大きなダメージを与えてしまうことになります。

 

包括的な観点に基づく事業継続計画=BCPが求められることに

 

リスクも多様化する時代、そんな問題すべてに個別の対策を行うことはもはや不可能です。

仮に、自社の復興が早期に叶ったとしても、取引先やサプライチェーンが崩壊すれば、経営を続けていくことは困難にもなりかねません。

このような背景から注目されるようになってきたのがBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)です。個々の防災対策ではなく、包括的に「事業を継続するには何をするべきなのか」を、様々な角度から考え事業継続の計画を立てようというものです。

つまり、「事業を停止させない、万一事業を停止させても即急な復旧を目指す」という点に照準を当てた計画を作り、実行すれば良いのです。

 

大地震、集中豪雨、収束の目処が立たない新型コロナウィルス感染拡大など、災害のほとんどが予測不可能です。

もしもの時、BCPが「策定中」や「検討中」など、「BCP未策定」の状態にあることは、工場にとって最大のリスクであり、策定は一刻を争う課題だと言うことがわかります。

 

 


とりあえずのBCP策定ではなく「実効性のある計画」を


 

緊急事態が発生した際に、事業を継続させるためには、平常時にBCP基本方針を立案しておくことが重要です。

万一災害にあった場合には、二次災害の防止措置、従業員の参集、安否・被災状況の確認などの初動対応から、策定した自社のBCPに準じた復旧対応を実際に行なっていかなければなりません。

 

形式だけのBCPの策定で、よくある「ひな型」で作成しても、いざという時に実効性に乏しく、計画倒れになってしまう可能性があります。

先に述べたBCPの目的を自社に照らし合わせて、いざという時にスムーズに実行できる計画を立案することが大切です。

 

そして策定したBCPに不備や不整合がないか、継続的に検証・改善を行っていくことも同時に大切です。

「計画」が計画倒れになってしまわぬよう、運用や改善の仕組みも取り入れてBCPを策定することが重要だということがわかります。

 

 

実効性のあるBCP策定に必要なポイントとは?

 

  1. 従業員の生命の安全確保

    従来の防災対策における必須項目として挙げられる「緊急事態発生時の従業員の安全確保」の徹底。

  2. 連絡手段の確保する

    固定電話・スマートフォン・PCなど、複数の通信機器からアクセスが可能な手段の確保、SNSなどのコミュニケーションツールの活用。

  3. 自社の実情を把握する

    「重要性の低い事業(=復旧を急がない事業)」を決めて、BCP本来の目的である中核事業からの復旧に焦点を当てる。

  4. 従業員への周知徹底

    BCPに対する教育・訓練を積極的に行うとともに、緊急時に使えるよう簡潔なマニュアルやチェックリストを備える。

  5. BCPの定期的な見直し

    平常時においてもBCPの見直しを行い、更新を行う。

  6. 地域連携BCPの活用

    地域企業同士が連携して、防災力・事業継続力の向上を図る「地域連携BCP」について、事前に調査を行った上で活用を検討する。

 

 

BCPサイクルの運用体制を確立

 

中小企業庁が提示している「平常時における BCPの策定と運用」を見てみましょう。

平常時にBCP基本方針を立案し、運用の流れを把握しておくことで、自社におけるBCPサイクルの運用体制が確立します。

 

 

 図:中小企業 BCP (事業継続計画) ガイド「BCP の策定運用の手順」より

 

 

基本方針の立案

 

「BCPを策定することで自社が何を目指すのか」という社内の共通認識があれば、実際のBCP発動においても、方針に基づいて適切に判断し行動できます。

 

BCPサイクルの継続運用|STEP1

自社の事業を理解する

 

まずどの商品を優先的につくるか、どのサービスを優先的に提供するかという経営判断を、予め行っておきましょう。

 

BCPサイクルの継続運用|STEP2

BCPの準備・事前対策を検討する

 

緊急事態発生時において、自社の中核事業を継続・復 旧させるための準備および事前対策を、しっかりと検討しておきましょう。

 

BCPサイクルの継続運用|STEP3

BCPを策定する

 

基本的なBCPの策定と、それを、いつ、どのような体制で利用するかについて、事前に整理しておきましょう。

 

BCPサイクルの継続運用|STEP4

BCP文化を定着させる

 

BCPに関する訓練や教育を積極的に行い、BCP運用に対する経営者の前向きな姿勢が会社の文化になるようにしましょう。

 

BCPサイクルの継続運用|STEP5

BCPのテスト、維持・更新を行う

 

BCPが自社の中核事業の復旧継続に 本当に有効かどうかをチェックすると同時に、自社に関する情報を、極力、最新の状態で維持しておきましょう。

 

さらに災害が発生してBCPを発動したら、収束後には新たな課題に基づく更新が必要になってきます。

BCPは単なる防災対策とは異なり、平常時から意識して積極的に取り組まなければならない企業活動の一環です。

このことをよく理解した上で、BCP対策に取り組む必要があります。

 

まとめ

緊急事態の発生を見越し、実効性のあるプランを策定しましょう。

BCPは、緊急事態の発生に備えて、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画であり、予測不能な災害が多発する現代において安定した経営を継続する上では、実効性のあるプランの策定が求められています。

有効なBCP対策のためには、策定の目的を明確にし、自社の実情を勘案して基本方針を立案、BCPサイクルの運用体制を確立する必要があることを認識しておきましょう。

 

 

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