今さら聞けない「ポカヨケ」。いつ、何をすればいいのか、具体的事例と共に解説します。

pokayoke

あらゆる製造業の現場において、「不良品欠品ゼロ」という目標が掲げられています。

しかしながら、製造から納品までの工程には多くの人が関わることから、不良品や欠品を完全に排除することは非常に困難とされています。誤操作や不注意などの人為的ミスによって生産された不良品が市場に出回ってしまい、リコール問題に発展することがあります。そうなった場合には、製品のブランド価値だけでなく、企業の社会的信頼にも深刻な影響を与えます。

このような問題を防ぐため、製造業が採用している有効な仕組みの一つとして、「ポカヨケ」があります。本記事では、「ポカヨケ」の基本的な概念や、その導入事例を紹介します。

「ポカヨケ」とは何か?

ポカヨケとは、工場などの製造ラインで、作業ミスを物理的に防止するために設置される仕組みや装置です。

わかりやすい例を挙げると、製造ラインで規格外の製品が発生した場合、警報が鳴るなどして、次の工程へ流さない仕組みが「ポカヨケ」にあたります。

ポカヨケの「ポカ」は、凡ミスをした時に「ポカをした」など、よく使われる言葉です。
それを、回避する=「よける」と組み合わせて、通常は考えられないミス(ポカ)を回避する(ヨケ)ところから来ています。

製造業における「ポカ」は、行うべき作業をしなかった、または、行ってはならない事をしたことにより、意図しない結果が発生してしまう事です。

不注意やルール無視などのヒューマンエラーが原因となる

ヒューマンエラーの要因

「ポカ」が発生する原因は、慣れや気の緩みから、現場においてマニュアルやルールを無視した自己流の作業が行われることが多く、様々なケースが報告されています。

また、作業初心者や外国人従業員が作業にあたる場合、作業の手順やルールの重要性が十分に伝えきれていないと、「ポカ」が発生しやすい状況に陥ります。

ポカが発生すれば、不良品が発生するだけでなく、重大な事故を招くことにもなりかねません。
こういった「ポカ」を未然に防ぐ仕組みが「ポカヨケ」なのです。

「ポカヨケ」を導入する4つのメリット

ヒューマンエラーを防ぐ「ポカヨケ」を導入する事によって、工場など製造業には、次のようなメリットがあります。

 1.製品の品質維持と向上

ポカヨケを導入することにより、不良品が製造されるリスクは低減し、常に安定した品質が保たれます。
特に高い品質が求められる精密機器の組み立て、加工などにおいては、徹底した工程管理が、品質向上により効果を発揮します。

 2.生産性アップ

製造工程において、ポカヨケで、失敗や間違いなどのヒューマンエラーが起こらないようにすることで、作業の中断が減り、作業効率がアップします。
作業効率が良くなれば、一部の工程だけでなく、ライン全体の生産性が向上します。

 3.コスト削減

製造工程での間違った動作をシャットアウトする「ポカヨケ」導入により、作業や生産の手順や注意点を、教える時間を短縮する事が可能になります。
多種多様な人材を扱う工場では、ひとりひとりが、スキルを完全に身につけるには、多くの時間と教育コストがかかります。
ポカヨケによって、作業の手順を統一することで、素早く即戦力の人材を養成する事が可能になります。

 4.労働災害の防止

ポカヨケは、不良品を無くすだけでなく、ヒューマンエラーによる事故発生を防止し、作業者自身の安全管理にも役立ちます。

厚生労働省が行っている労働災害分析の、製造業における事故の型別死傷者数の「不安全な行動別死傷者数」によると、「防護・安全装置を無効にする」、「不安全な放置」「危険な状態を作る」など、人の不注意によって死傷者を伴う事故が多く発生しています。

出典:「労働災害原因要素の分析 (製造業)」(厚生労働省)

ポカヨケを導入するタイミングと対策方法

ポカヨケは、ヒューマンエラーによる、不良品や欠品の発生を防ぐ仕組みです。
では、製造業の工程において、どのタイミングでどんな対策があるのかを見ていきましょう。

 不良の発生前

ヒューマンエラーを事前に防止して、不良の発生をより確実に防ぐポカヨケの施策です。
不良発生リスクの評価、製造技術上の原理の利用、作業ミスが発生しない設計などがあります。
特に、作業者がミスをした場合に次の工程へ進めなくする「フールプルーフ」という考え方が重要です。

 不良の発生時

不良の発生したタイミングでのポカヨケは、日常の製造工程で、画像認識や光学センサによって不良を防止するポカヨケの施策です。
警報が鳴って異常を知らせるものや、不良が発生した瞬間に装置を停止させたり操作盤ロックさせたりして、人間が操作できなくする方法があります。

 不良の発生後

製造ラインではなく、不良発生後の後工程で検査するポカヨケの施策です。
製造ライン内での不良発生で対策を行わない代わりに、製品包装や出荷の工程において、自動で検査検出して、不良品が流出するのを防ぎます。

製造業でのポカヨケ導入事例

各分野において、近年、デジタルテクノロジーを活用したポカヨケの導入が急速に発展しています。
製造業において、ポカヨケを活用している事例を紹介します。

 ARと音声による作業ミスを防止

正確さが求められる作業工程では、複雑なものや危険が伴う作業が多く、作業する人の経験や能力に依存することが少なくありません。

現在では、タブレット端末とARガイダンス、音声ガイダンスを用いたナビゲーションに従うことで、個人の能力や経験に依存することなく、スムーズに作業することが出来るようになっています。
画面で動画や音声などを見ながら作業手順の確認が行えるため、ヒューマンエラーがより防止しやすくなります。

さらに画像やデータの記録を行うことによって、ARと音声を用いた研修等も可能で、社員教育の効率化にもつながります。

 ICタグやバーコードリーダーの活用

多種多様な製品や部品を扱う製造業には、指示書との照合や、作業漏れのチエックなどの識別作業が非常に重要です。しかし、作業員が目視などで確認しながら識別作業を実施する場合、見落としや作業ミスなどのヒューマンエラーを完全に無くすことはできません。

デジタル技術を活用したポカヨケの施策では、バーコードやQRコード、RFIDを、リーダーで読み取って照合するなど、識別作業を自動化することが可能になります。
識別作業の自動化により、製造ラインにおける作業遅れによる不良の発生も、未然に防ぐことが可能になります。

  IoT化を活用した機能付き工具の活用

トルクレンチ、プライヤーレンチなど、作業員が使う工具にポカヨケ用の送受信機を取り付ける事で、誤組み付けを防ぐ仕組みもあります。
マーキング作業の工程で規定回数をカウンタ表示機能、空打ちを防ぐためのロック機能、締め付け忘れ防止機能など、応用性にも優れている点で注目されています。

 デジタル技術「センシング」によるヒヤリハット防止

感知器などを使用して、様々な情報を計測して数値化する「センシング」は、IoTに必須の技術です。
このセンシングを利用して、報告に上がらない転倒やつまずきなどの「ヒヤリハット」を検知することが可能になっています。

直接的にヒューマンエラーを防ぐものではありませんが、センシングによるデータの蓄積が、事故対策の検討に大いに役立ち、結果的にポカヨケへと結びつきます。

ポカヨケで製品の質と生産性の向上を目指そう

ご紹介してきたように、技術の進歩によって、様々な方法でポカヨケによる不良品対策が行えるようになっています。
この他にも、色分けや検印スタンプなどによるポカヨケなど、現場で手軽に導入できるものもあります。
自社の製造ラインや作業環境を検証し、最適なポカヨケを取り入れ、不良品をなくし、生産性の向上を実現すると同時に、不良が何故発生するのか?という根本的な問題にも目を向けて、改善に取り組みましょう。

まとめ
・ポカヨケとは、工場などの製造ラインで、作業ミスを物理的に防止するために設置される仕組みや装置のこと。
・ポカヨケ導入のメリットとして、品質の向上、生産性アップ、安全管理、コスト削減が挙げられる。
・ポカヨケ導入のタイミングは、不良の発生前、発生時、発生後に分類される。
・製造業のポカヨケでは、デジタル技術を活用した施策が広がっている
・ポカヨケを導入することと同時に、不良がなぜ発生するかにも目を向けて原因を把握する必要がある。