猛暑日が続く中、工場や倉庫での「暑さ対策」は深刻な問題です。
一般の住宅やオフィスとは異なり、面積も広く天井も高い工場や倉庫では、エアコンをフル稼働しても場内が冷えないなどの現象が発生し、熱中症による被害も増加しています。
そこで今回は、そんな現場の「冷えない」を解消する「スポットクーラー」の仕組みや活用方法をご紹介します。
※スポットクーラーには、家庭用と業務用がありますが、この記事では工場や倉庫の空調設備として活用できる「業務用スポットクーラー」について解説します。
目次
スポットクーラーが空気を冷やす仕組み
スポットクーラーとは、いわゆる持ち運び移動可能なエアコンです。
メーカーによっては「スポットエアコン」「冷風機」と呼ばれています。
エアコンが空間全体の温度をコントロールするのに対して、スポットクーラーは、冷たい風を人や場所など温度を下げたい対象に直接当てて冷やします。
冷気を生み出す仕組みはエアコンと同じで、スポットクーラーにも「熱交換機」が備わっています。
熱を帯びた空気を吸い込み、熱交換機で冷たい空気に変換し、吹き出し口から冷風を送り出す仕組みです。
スポットクーラーとエアコンの違い
エアコンもスポットクーラーも、冷たい空気を作る仕組みは同じです。
では、具体的に何が違うかおわかりでしょうか?
答えは「排熱方法」にあります。ここからは、エアコンとスポットクーラーの排熱方法についてご説明します。
エアコンの排熱方法
エアコンには室内機とは別に、必ず室外機があります。
室外機の役割は、冷房時に室内の熱を屋外へ逃がし、暖房時には室内に熱を送り込む事です。
エアコンは、室外機を介して熱を持った空気を部屋の外へ逃がし、冷たい風だけを放出するので、室内全体を涼しくできるのです。
スポットクーラーの排熱方法
スポットクーラーは、室内機と室外機が一体化していて、本体から冷たい空気と熱を持った空気を同時に排出しています。
したがって、設置した空間全体を涼しくするといった用途には不向きですが、ピンポイントで狙った場所を涼しくする、又は冷やす事ができるといった性能は、スポットクーラーが優れています。
※ 業務用スポットクーラーでも、「排熱ダクト」を使って排熱だけ屋外に放出することが可能なものもあります。ただし、壁に穴を開けるなどの工事が必要になり、コストや設置までの時間などに注意が必要です。
スポットクーラーを活用する3つのメリット
スポットクーラーは、空間全体の冷房には不向きでも、ピンポイントの冷却効果がある事がわかりました。
では、次にスポットクーラーを設置するメリットについて解説します。
1.設置工事不要でスグに使える
スポットクーラーの最も大きなメリットは、工事のいらない冷房機器であるという点です。
工事が必要なエアコンでは、その間は業務に支障が出る場合もありますが、スポットクーラーは本体とダクトがあれば、電源コードを差し込むだけで届いたその日から使用できます。
※ 200V電源方式のスポットクーラーなど、プラグやコードが付属していないものの場合は別途購入が必要です。
2.使いたい場所への移動が簡単
ほとんどのスポットクーラーにキャスターが備わっていて、本体の重量にもよりますが、女性や高齢者でも比較的簡単に移動ができます。
必要に応じて本体の向きを変えたり、移動させたりする事も容易な為、手軽に使えます。
3.狙った場所をしっかり冷却できる
スポットクーラーは、ピンポイントの冷却において、エアコンより優れた性能を発揮します。
従業員など、人のいるゾーン付近に設置すれば、過度な体温の上昇を防ぎます。
また、エアコンだけで大規模な工場や倉庫全体を満遍なく冷房するには、多くの電気代がかかりますが、必要な部分を集中的に冷やせるスポットクーラーなら、省エネ、コストダウンにもつながります。
特に、シャッターや扉などが常に解放された状態でエアコンが効きにくくなかなか冷えない倉庫などでは、強い冷風を送ることができるスポットクーラーが高い冷却効果を発揮します。
業務用スポットクーラーおすすめ設置ポイント
どこにでも移動ができるスポットクーラーは、工場のこんな場所で使うと便利です。
- 広い工場内で、従業員が作業している場所だけを涼しくしたい時に。
- 高温の屋外など冷房の無い場所での熱中症対策に。
- 猛暑日で熱中症アラートが発令されるなど、エアコンだけでは十分に冷えない場合の緊急冷却装置として。
- 普段は人のいない場所や使っていない場所を、ピンポイントで素早く冷却したい時に。
以上のようなケースで、スポットクーラーは、現場や工場、倉庫などの「冷えない」を解消する一助となるでしょう。
業務用スポットクーラーを選ぶときに注意したいポイント
スポットクーラーはメーカーや機種によって異なる特徴があり、それぞれに適した活用場所があります。
例えば、工場や倉庫に家庭用スポットクーラーを設置しても、パワー不足で「冷えない」「涼しくない」など、十分な効果を得られませんし、同じ業務用であってもパワーや性能には違いがあります。
ここでは、上手な業務用スポットクーラーの選びのポイントを5つご紹介します。
冷房能力(キロワット数)
スポットクーラー選びで、まずチェックしたいポイントのひとつが「冷房能力」です。
冷房能力は「kw(キロワット)」で表示される場合がほとんどで、このkw数が大きいほど冷房能力も高くなります。
一般的に、家庭用スポットクーラーは0.5~2.0kW程度なのに対して、業務用スポットクーラーでは2.5kW以上ある製品が主流です。
広い工場や天井の高い倉庫で、なかなか冷えないことにお悩みでしたら、十分な効果を得るためには、圧倒的に冷房能力が高く、耐久性のある業務用スポットクーラーがおすすめです。
【広さと必要な冷房能力の目安】
- 12畳(約21.9平米)の場合 → 3.6kw
- 16畳(約29.2平米)の場合 → 5.2kw
※ 大量の機材が設置されている現場、天高や建物の構造など、周辺環境によって熱負荷も変わるため、面積が同じだからといって、必ずしも冷却効果が一定とは限りません。
サイズと重量
業務用として販売されているスポットクーラーでも、中には小型のものもありますが、冷却できる広さが2~6畳程度と、どちらかと言うとオフィス向きで、工場や倉庫など現場での使用には不向きです。
広い場所で活用できる業務用タイプは、中~大型タイプのものが主流になります。空調設備の全く無い仮設倉庫や、大規模工場などで使用するには、さらに大きい超大型スポットクーラーが適している場合もあります。
業務用はサイズが大きいだけでなく、重さが40~50kgのものも少なくありません。
大きくなればなるほどスポットクーラーそのものの重量も重たくなるので、チェックをお忘れなく。
設置したい場所に十分なスペースがあるか? 未使用時の収納場所なども考慮して、事前に検討しておく必要があるでしょう。
吹き出し口の数と機能
スポットクーラーの冷風は吹き出し口から出てくる構造なので、吹き出し口が多ければその分冷却範囲も広がります。
- 吹き出し口が2つ以上ある
- 首振り機能が付いている
などの条件を満たせば、複数人を同時に涼しくしたり、広い範囲を涼しくしたりする事が必要な場面でも、十分な効果を得られるでしょう。
また、作業員も多く、機械が設置されている工場などの現場では、スポットクーラーを複数台設置できるスペースの確保は困難です。
限られた設置台数でも、複数の吹き出し口や首振り機能があれば、広い範囲をカバーできるので便利です。
メンテナンス性
スポットクーラーは、冷房や除湿時に吸い込んだ空気を熱交換で冷やすため、結露により水分が発生します。
この水分を「ドレン水」と呼びます。
一般的なスポットクーラーでは、ドレン水を一定量まで貯められる構造になっていますが、定期的に排水する必要があり、手間もかかります。
一方「ノンドレンタイプ」のスポットクーラーは、手動で排水しなくても、排気用のダクトからドレン水も同時に排出する仕組みです。
ノンドレンタイプは長時間連続で使用する場合に便利ですが、ダクトで排水もするのでカビも発生しやすく、小まめな手入れが必要になります。
どちらが良いか、連続で使用する時間や設置場所の環境によって選択しましょう。
暖房や除湿機能の有無
工事のいらないスポットクーラーは、手軽で便利な冷房機器です。
熱中症予防など、労働環境改善の観点からも需要が高まり、各メーカーが様々なバリエーションの製品を開発しています。
夏の「冷えない」の解消だけにとどまらず、冬も使える暖房機能を備えたもの、湿度の高い場所で活躍する除湿機能付きのもの、温度の調節が可能なものなどもありますので、用途に合わせて最適な機種を選びましょう。
消費電力、電気代について
自社でスポットクーラーを導入した場合の電気代を知るには、「消費電力」と「電気代の単価」が必要です。
消費電力については、メーカーのカタログやWEBサイトなどでもわかりますが、電気代の単価については自社が契約している電力会社のプランによって違うので、正確に割り出すには、検針票で確認するか契約している電力会社に問い合わせる必要があります。
「消費電力」と「電気代の単価」がわかったら、次の順に目安の電気代を割り出して検討しましょう。
- 1.1時間あたりの電気代を算出します。
「1時間あたりの電気代=消費電力(kWh)×電気代単価(円/kWh)」 - 2. 1カ月の電気代の目安を計算します。
「1カ月の電気代=1時間あたりの電気代×1日あたりの使用時間×使用日数」
必要な時だけレンタルすることもできる
工場や倉庫の「冷えない」を解消するスポットクーラーですが、大型、超大型のものになると、それなりに価格も高くなります。
メーカーや取扱店にもよりますが、スポットクーラーを導入する方法として、レンタルと購入があります。
購入よりもレンタルが割高なイメージかもしれませんが、レンタルには初期投資が要らず、修理費やメンテナンス費用もかからないので導入しやすい、というメリットがあります。
※ 契約内容や故障の内容によっては、レンタルでも修理費が使用者の負担になる場合もあるので、予め確認しましょう。
まとめ
- スポットクーラーとは、移動可能なエアコンで、冷たい風を人や場所など温度下げたい対象に当てて直接冷やすタイプの空調機である。
- スポットクーラーは、熱を帯びた空気を吸い込み、熱交換機で冷たい空気に変換し、吹き出し口から冷風を送り出す仕組みである。
- スポットクーラーは、室内機と室外機が一体化していて、冷たい空気と熱を持った空気を同時に排出している。
- 工事のいらないスポットクーラーは、移動も簡単で、ピンポイントの冷却に適している。
- スポットクーラーを選ぶときは、冷房能力やサイズ、機能などをチェックし、使用場所や目的に合っているか確認する。
- スポットクーラーの電気代の目安は、「消費電力」と「電気代の単価」で割り出す事ができる。
- スポットクーラーはレンタルできるものもある。
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