製造現場や物流輸送における事故やトラブルを最小限に抑えるにはどうしたら良いのだろう?と日々模索されている方はとても多いのではないでしょうか?
ご承知のように事故というのはある日突然起こるのではありません。普段の作業の中でマニュアルと違う作業をしたり、確認作業を怠ったりといった小さな積み重ね(ヒヤリハット)が事故につながるのです。事故を減らすにはこの「ヒヤリハット」を特定し、最小限に減らす予防対策をとることが事故を抑制する効果的な方法だと言えます。この記事では、職場でのヒヤリハットの確率を減らすために使用できる実践的なプランと対策について解説します。
目次
ヒヤリハットを減らす方法について、確認すべきことは?
ヒヤリハットによる負傷のリスクを低減するために、事業主や安全管理者がとるべき方法をお伝えします。
事業主や安全管理者がとるべき方法
- まず、危険な作業を理解し、特定することが重要です。これには、重機の使用や危険な化学物質や材料の取り扱いを伴う仕事を探すことが含まれます。
- 潜在的なヒヤリハット事例を報告・調査する体制を確立する必要があります。事故につながりそうな要因を包括的に洗い出し、安全点検チェックシートにまとめましょう。
- 職場の潜在的なリスクを特定するために、包括的な危険の特定と評価を実施しましょう。
- 最後に、定期的な安全検査とスタッフへの教育トを実施し、すべての安全ルールが常に遵守されていることを確認しましょう。
次の項目では、安全点検チェックシートの作り方についてご説明します。
安全点検チェックシートで抑えるべきポイント
安全点検チェックシートには点検すべき項目のリストと、潜在的な危険の詳細なチェックリストが含まれている必要があります。
潜在的なヒヤリハットのチェック項目
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- メンテナンスが必要な機器
- 可燃物、危険物質にさらされるリスク
- ヒューマンエラー、シートベルト、ロックアウト/タグアウトの手順
これらに加えて設備や物理的環境、個人用保護具の使用、その他の安全ルールや基準による危険の可能性を評価する必要があります。チェックリストでは、潜在的なリスクを特定し、傷害の発生リスクを低減または防止するための措置を提案する必要があります。
安全点検チェックシートの活用方法
日々の確認で危険の芽をつみとる
安全点検チェックシートが最大限に活用されていることを確認するために、頻繁にチェック項目を照らし合わせて確認する必要があります。危険箇所を日々記録し、作業者に安全上の必要性を喚起しましょう。
定期的な抜き打ち検査も効果がある
また、定期的に抜き打ち検査を行い、安全点検シートを検証し、安全を守る手順が遵守されていることを確認する必要もあります。安全点検チェックシートは、改善が必要な箇所を強調するように設計し、是正措置の提案を報告書に記載することも必要です。
他社の事例を参考に自社の危険個所をチェックする
事故につながりそうな箇所を全て洗い出したと思っても、思わぬ事故は起きるかもしれません。潜在的なリスクがすべて考慮され、対処されていることを確認するためには、ヒヤリハットに対するリスクマネジメント計画を実施した他社の事例を確認することが有効です。
次の項目では、製造業のヒヤリハット事例を5つご紹介します。
危ない!ヒヤリハットの事例を5つ紹介
商品ピッキング時のヒヤリハット事例
オーダーピッキングリフトに乗って棚から商品を選別収集していたところ、墜落しそうになった。
作業の種類
配送商品の選別収集(ピッキング)
ヒヤリ・ハットの状況
倉庫でオーダーピッキングリフトに乗って棚から商品を選別収集していたところ、商品に手が届かず高さ2.45mから墜落しそうになった。
原因
オーダーピッキングリフトの運転時に、安全帯を使用させていなかったこと。オーダーピッキングリフトの安全作業に関する教育を行っていなかったこと。
対策
オーダーピッキングリフトの運転時は、労働者に安全帯を着用させること。オーダーピッキングリフトの安全作業に関する教育を行うこと
電気点検時のヒヤリハット事例
電源スイッチを切り忘れた状況で小型アーク溶接機の端子部に触れようとした
作業の種類
点検
ヒヤリ・ハットの状況
小型アーク溶接機の点検作業中、端子部をパンチで取り外す時、 電源のメインスイッチを切り忘れていることに気づいた。
原因
電源を切らずにアーク溶接機の点検をした。
対策
電気機器の点検の際は必ず元電源を切ることを周知する。
製麺機点検時のヒヤリハット事例
製麺機の清掃中、カット箇所に指が挟まれそうになった
業種
食料品製造業
作業の種類
製麺機の清掃
ヒヤリ・ハットの状況
製麺機を清掃中、運転させたままの状態で清掃を行ったため、カット箇所(切羽)に指が挟まれそうになった。
原因
清掃にあたり、製麺機を完全に停止させなかったこと。
対策
清掃、調整、かすの除去等の作業時には、製麺機を完全に停止させ、電源スイッチを切った状態で作業を行うこと。また、清掃に係る作業手順書を作成し、作業者に対し安全衛生教育を十分に行うこと。”
工事現場のヒヤリハット事例
足場解体中、足場材が落下し、歩行者にぶつかりそうになった
業種
建設業
作業の種類
足場の解体作業
ヒヤリ・ハットの状況
工事現場の足場の解体作業中、足場材(腕木材)を取り外そうとしたところ、地上に落下させてしまった。落下防止ネットの一端が固定されていなかったため、足場材は道路まで落下した。
原因
腕木材が架台に固定されていると勘違いして、腕木材と水平材を固定していたクランプを外したこと。また、落下防止ネットが適切に設置されていなかったこと。
対策
足場の解体作業開始前に、落下防止ネットの設置状態を点検する。
タイヤ交換時のヒヤリハット事例
空気を充填したタイヤをトラックに装着していたところ、サイドリングが吹き飛んで作業員に当たりそうになった
業種
燃料小売業
作業の種類
タイヤ交換
ヒヤリ・ハットの状況
トラックのタイヤ交換中、空気を充填したタイヤを装着していたところチューブが破裂し、タイヤをホイールに固定するサイドリングが吹き飛んで作業員に当たりそうになった。
原因
サイドリングがリムにかみ合っているかどうかの確認をしていなかった。タイヤのチューブが経年劣化で破裂し、その衝撃でサイドリングがリムから外れた。
対策
タイヤ・ホイール・セット部品を点検し、リムとサイドリングのかみ合い状態を点検する。
事例を検討する際には、安全な方法から逸脱している部分を探し、何が悪かったのか、何が良かったのかを評価しましょう。これは、リスクマネジメント計画を改善するための有効なベンチマークとなり、強化すべき領域を特定するのに役立ちます。
事故を引き起こす可能性のある要因を減らす行為が、職場を守ることにつながる
工場や建設現場などの危険な職場では、潜在的なリスクを認識し、それを回避するために、ヒヤリハット事例のモニタリングが欠かせません。ヒヤリハット事例の一つひとつを丁寧に調査し、どのように回避したかを明らかにすることで、今後同様の事例が発生する可能性を低減するために手順やプロセスを修正することができます。
日々の改善が職場の安全を守る
ヒヤリハットを特定するために、従業員にはどんな些細な出来事でも報告するよう求め、罰を受けることを恐れずに報告する機会を与える必要があります。また、定期的に従業員に質問をすることで、まだ報告されていない状況を発見することができます。
さらに、ヒヤリハットを分析し、安全教育の一環として活用することで、作業空間に潜む脅威や手順の間違いを認識できるようにする必要があります。
まとめ
- 効果的な安全点検チェックリストは事故防止に不可欠
職場で働く人の怪我のリスクや生産ラインの停止といった不慮の事故を減らすためには、あらかじめ潜在的な危険箇所を特定する必要があります。そのためには、効果的な安全点検チェックリストを設定するための措置を講じる必要があります。 - ヒヤリハットにつながりそうなネタは他社の事例も参考になる
また、他社の事例を参考にすることで、類似のヒヤリハット事例から学び、効果的な安全対策を見出すことができます。これらのステップを踏むことで、企業は安全ルールを改善し、職場のヒヤリハットによる負傷のリスクを減らすことができます。