安全衛生活動の最大のカギはマンネリ化防止! 傾向と対策をまとめました!

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企業には、従業員を安全で衛生的に働かせる義務があります。
従業員が安全に働けるよう必要な措置を講じるため、事業所の規模に応じて、社内の衛生や安全を管理する者の設置等が、法律(労働安全衛生法)によって求められています。

その上で行われる「安全衛生活動」は、工場や倉庫の労働災害防止に欠かせない重要なアクションのひとつです。

ところがこの「安全衛生活動」を阻害する大きな要因が存在します。それが「マンネリ化」です。
マンネリ化は、どの事業者でも必ず直面する問題であり、解決しなければならない課題であると言えます。

今回は、安全衛生活動とマンネリ化防止についての、傾向と対策をご紹介します。

工場で行うべき安全衛生活動とは?

厚生労働省発表の令和2年度労働災害発生状況を見ると、労働災害による死亡者数は802人、休業4日以上の死傷者数は131,156人(過去最多)となっています。
これは、工場だけの数値ではありませんが、業種にかかわらず「労働災害」が多く発生している事を示しています。

このような危険を避けるため、多くの工場には安全を守るための「ルール」が設定されています。

特に工場での大きな事故は、作業員の命や工場の存続にも関わります。
現場にどのような危険があるのかを把握し、安全のためのルールを全作業員で徹底して守る「安全衛生活動」が不可欠です。

もしもルールによって工程が増えたり、作業効率に影響が出たとしても、危険を避けるためには欠かせないものものだと認識して取り組むことが重要です。
安全衛生を脅かす危険なことがあれば、作業員同士がホウレンソウ(報告・連絡・相談)しあって対策を立てましょう。

ここからは、工場で行われている代表的な安全活動を簡単に見ていきます。

環境を整えて従業員を守る|5S活動

製造業における職場環境や安全性を改善するための考え方(スローガン)は5S活動といいます。
5S活動の5つのSとは、整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、しつけ(Shitsuke)を指します。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

整理
必要なものと不要なものを明確に区分し、不要なものは処分する。

不要物の放置による衛生面や作業環境の悪化防止、二次災害などの被害拡大防止に役立ちます。

整頓
道具や資材の置き方・数を決めて整頓し、必要なものを誰でもすぐに取り出せるようにする。

作業の効率化、紛失物の混入事故の防止をはじめ安全性の向上に役立ちます。

清掃
一般的な掃除だけでなく、定期メンテナンスも含めたクリーンアップを行う。

機械のスムーズな作動、細菌や微生物の除去、昆虫発生の防止などに役立ちます。

清潔
整理・整頓・清掃(3S)を実施して、その状態を維持する。

しつけ
清潔を保つためのルール化や、習慣化を促す。

危険を予知して回避する訓練|KYT

KYTとは、安全衛生活動の中でも、危険に対する感受性や集中力、問題解決能力を高めるために行う訓練のことです。
危険(Kiken)、予知(Yochi)、訓練(Training) のことを指します。

KYTには、1R(ラウンド)~4R(ラウンド)からなる「基礎4ラウンド法」という訓練手法があり、事故が発生しそうな状況のイラストを見ながら行うパターンと、実際の現場を見ながら行うパターンなどがあります。

1R:潜んでいる危険のあぶり出し
5名前後(活発に意見を言い合える人数)でイラストや現場を見て、考えられる危険を挙げる。

2R:重要度の分類
1Rであぶり出した危険の中から、重要だと思われる項目を取り出し、さらにその中から再び重要なものを絞り込んで「危険ポイント」とする。

3R:重要度が高い項目の対策案の検討
2Rで挙げられた「危険ポイント」を解決する対策法に関して意見を出し合う。

4R:チーム共通のものとしてルール化
3Rで検討した対策法の中から、実施する項目をマークアップし「チーム共通ルール」とする。

マンネリ化に陥りやすい危険予知訓練(KYT)

工場の安全活動の中でも、「形だけ」「実施しているだけ」になりやすく、マンネリ化しやすいのがこの危険予知訓練(KYT)です。

ルーティーンワークでは、危険のポイントや行動指針に大きな変化は出にくく、ルール化の表現も代わり映えがしないものになりがちです。
代わり映えがしなければ、頭にも残りにくく、訓練も惰性になってきます。

このように現場で取り組むKYTのマンネリ感は、安全衛生活動の担当者にとっても悩ましい事態です。
何故なら労働災害は、安全衛生活動が停滞している時、即ちマンネリ化している時に起きやすいからで、こういうタイミングこそ、改めて注意が必要です。

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安全衛生活動におけるマンネリ化防止の考え方

例に挙げた危険予知訓練(KYT)は、自分や仲間がケガをしないために行うものです。
職場に潜む危険を先取りしてケガの可能性を予知したり、問題点を発見して解決したりするなど重要な訓練です。
ですが、その重要性をリーダー(管理監督者/責任者)が正しく理解しておらず、率先して行動していないと、従業員には「やらされ感」だけが残ることになるでしょう。

安全衛生活動は、職場全体が主体的に取り組んでいてこそ、無理なく熱が入るものです。

安全衛生活動のマンネリ化防止を実現するには「災害を絶対に起こさない」という強い意思が必要です。
現場を盛り上げ、牽引すべきリーダーが「何とかしてこの問題を解決したい」「現状を変えたい」という問題意識を持っているか否かで、その成果は大きく変わってきます。

リーダーが強い意志と熱意を持ち続けて、「安全意識を高める新しい仕掛け」をつくることで、作業員は興味を持ち、安全に心がけて仕事に取り組むことができるのです。

安全衛生活動に関心をもたせるポイント

5S活動の場合

先にご紹介した、整理(Seiri)、整頓(Seiton)、清掃(Seisou)、清潔(Seiketsu)、しつけ(Shitsuke)の「5S活動」を効果的に進めるためには次のことに配慮する必要があります。

  • 経営トップ・事業場トップがこの活動に強く関心を持つこと。
  • 5S活動の意義と効果について、現場で話し合いを行って共通の認識を持つこと。
  • それぞれの現場ごとに、5Sの具体的な到達目標とそれに応じた基準を設けること。
  • 個々の従業員が、分担する役割を決めること。
  • 一定期間ごとに進捗状況を確認し、振り返り、改善を行うこと。

KY(危険予知)活動の場合

危険予知に関する安全活動の場合、リーダーが率先して行動しているかどうかが大きな鍵となります。
職場の状況と、リーダーの問題点を、チェックリストで捉えて話し合うことが重要です。
大きくは下記のような項目になります。

  • みんなで挨拶をしているか?
  • 朝礼・終礼の様子はどうか?
  • 作業指示はどうしているか?
  • 作業にKYは活かされているか?
  • 経営者・管理監督者はKY活動を支援していいるか?

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中央労働災害防止協会が下記URLでチェックリストを公開しています。
https://www.jisha.or.jp/zerosai/pdf/KY_checklist.pdf

安全衛生活動のマンネリ化を防ぐ工夫

ヒヤリ・ハット報告制度
従業員が経験したヒヤリ・ハットを危険を発表してもらい、他の従業員の災害防止に対する関心を高める。

小集団活動への参加
従業員を安全施工サイクル運動、指差唱和運動、危険予知活動などに参加させる。

表彰制度の活用
安全活動を継続して実施する中で、やる気を起こさせて向上心を育てる方法として表彰を行う。

あいさつ運動・ひと声かけ運動
普段からあいさつなどのコミュニケーションを推進し、従業員の不安全行動に気が付いた場合、見かけた者が声をかけて互いに注意し合い、災害の発生を未然に防ぐ。

指差呼称運動
人の不注意や錯誤を無くし、安全意識を高めるために「指差し」「声を出して◯◯ヨシ!」などと確認を行う運動。

相互注意運動
不安全行動をしている従業員に気付いた人が、すぐに注意し合う運動。

安全当番制度
元方事業者、関係請負事業者の中から一定期間ごとに、輪番で安全を担当する者を選任する制度。

オアシス運動
「おはよう」「ありがとう」「失礼します」「すみません」を積極的に使い、コミュニケーションを図る運動。頭文字を取ってオアシス運動と称する。

全員リーダー制度
グループ(従業員)の各々が、それぞれ何らかの役割を分担し、自主的に行動するような仕組み。

まとめ

  • 安全衛生活動のマンネリ化は、労働災害を起こす可能性がある。
  • 厚生労働省発表の令和2年度の労働災害による死亡者数は802人、休業4日以上の死傷者数は131,156人で過去最多となった。
  • 安全衛生活動におけるルールによって工程が増えたり、作業効率に影響が出たとしても、危険を避けるためには必要不可欠なものだと認識して取り組むことが重要。
  • 労働災害は、マンネリ化など安全活動が停滞している時に起きやすいので注意が必要。
  • 安全衛生活動を効果的に継続するためには、リーダーの意識向上と施策の仕掛けが必要。

今回は、安全衛生活動における「マンネリ化」にスポットを当ててレポートしました。

安全衛生活動には、業種ごとに様々なスタイルがあり、特に工場では最も優先すべき活動のひとつであると言えます。
どの事業者も抱える「マンネリ化問題」にいち早く取り組み、活きた安全衛生活動を継続することが、従業員の安全と安心を確保するとともに、安定した事業継続~発展の鍵となりそうです。