ご存知ですか? 工場ならではの5つの火災原因と消火活動を見極めるポイント

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工場・作業場の建設火災として記憶に新しいところでは、2022年12月27日に、東京墨田区で発生した「第一化学工業所」の火災でしょうか。延焼により敷地内にある作業所10棟計約1300平方メートルが全焼しました。

建物が密集している地域でもあったため、被害は周囲の事務所や共同住宅など計4棟約1300平方メートルにまで広がり、焼損面積を合わせると約2600平方メートルに及びました。この火災は、化学物質を扱う工場で起きたことから、有毒ガス発生の危険もあり、周辺住民が一時避難するなど、一般的なビル火災以上の影響もありました。

このように、工場で火災が発生した場合には大きな被害が及ぶ可能性があります。と同時に、万一発生した場合に備え、どんな対応をするべきか対策をしておく備えが重要です。

そこで今回は、工場ならではの出火の原因と対策のポイントについてお伝えします。事業所内で危険物や発火物などを取り扱う方はぜひともご覧いただき、今後の対策に生かしていただけると幸いです。

工場火災は年間2,100件も起きている

総務省の統計によると、令和3年の出火件数は、35,222件、1日あたり約96件、15分ごと。なんと1件の火災が発生している割合になります(総務省統計データ )。

国内の火災件数としては2016年以降、減少〜横ばいの傾向ですが、工場・作業場の建物火災件数を見てみると、緩やかな増加傾向を示しています。

令和3年に発生した建物火災は19,549件で、そのうち工場、作業場、倉庫の火災は、合わせて2,100件にも登りました。そこで今回は、経営者や管理者なら知っておきたい、工場で起る可能性がある火災の種類や、消火をはじめとする基本的な対処方法について、チェックしていきましょう。

出典:「令和3年(1~12月)における火災の状況(確定値)について」(消防庁)

「火災」原因は5つに分けられる

火災とは、何かが燃えて起こる現象です。
ものが燃えるには、可燃性物質と酸素、温度(熱源)が必要で、これを「燃焼の3要素」と呼び、さらに何が燃えているのかで、火災の種類が「A火災」「B火災」「C火災」「D火災」「ガス火災」の5つに分けられています。それぞれの火災について意味と原因を見ていきましょう。

A火災(普通火災、一般火災)の原因と対応方法

A火災とは、木材、紙類、繊維など普通の可燃物が燃えた事で起こる火災です。
普通火災または一般火災とも呼ばれます。

一般住宅、ビルなどの建物内部で発生する場合が多く、火の不始末や不審火などが主な原因として挙げられます。

A 火災の消火には、水、強化液、泡、りん酸塩類粉末系の消火剤が使われます

B火災(油火災)の原因と対応方法

B火災とは、油が燃えた事で起こる火災で、ガソリンなどの引火性液体の火災です。
油火災(あぶらかさい)とも呼ばれています。
一般的に知られている油火災として天ぷら油などへの引火によるものがあり、引火性液体がなくなるまで燃え続けるなど、大変危険な火災です。油火災では、消火の際に水をかけてしまうと、燃えている油が水に浮いて炎を拡大させてしまうため、注意が必要です。

B 火災の消火には、霧状の強化液、泡、ガス、粉末系の消火剤が用いられます。

C火災(電気火災)の原因と対応方法

C火災とは、電気設備が燃えた事で起こる火災で、電線や変圧器、モーターなどから発火した火災です。
電気火災(でんきかさい)とも呼ばれています。
工場や作業所で発生することも少なくない火災で、感電など二次災害の危険もあり大変危険です。

C 火災の消火には、霧状の水、霧状の強化液、ガス、粉末系の消火剤が用いられます。

D火災(金属火災)の原因と対応方法

D火災は、金属が燃えた事で起こる火災で、鉄、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、カルシウムなどが原因となる火災です。
金属火災では、原因となる金属が水と反応し、消火注水により水素を発生し、爆発を引き起こす危険があるため注意が必要です。

D 火災の消火には、乾燥砂などが用いられます。

ガス火災の原因と対応方法

ガス火災は、可燃性ガスによる火災です。主に都市ガスやプロパンガスなどが原因です。
都市ガスやプロパンガスは、取扱いを誤ると火災、爆発、また不完全燃焼による一酸化炭素中毒事故なども引き起こす危険があるため注意が必要です。

ここからは「消火活動」をする際にしっておきたい4つの要素についてご説明します。

燃焼を止めるにはどのような方法があるのか

火災とは、燃焼の3要素「可燃性物質、酸素、温度(熱源)」によって、何かが燃えることで引き起こされる災害ですが、この「燃焼」を止める行為を消火といいます。

燃焼を止めるには、「燃焼の3要素」の、全てか一部を取り除かなければなりません。
消火方法には除去、窒息、冷却、抑制の4つがあり、火災の状況によって消火の方法も異なります。

除去消火のやり方

除去消火とは、可燃物の供給を止める、周囲の可燃物を取り除くことで消火する方法です。
例えばガス漏れによる火災なら、ガスの元栓を閉める=可燃物の供給を止めて消火します。
油田火災など大規模な火災では、爆風を利用した除去消火法が用いられます。
その他には、燃えている建物の周辺を破壊して延焼を防ぐ除去消火法などがあります。

窒息消火のやり方

窒息消火とは、燃焼に必要な酸素の供給を断つことで消火する方法です。
アルコールランプのフタをかぶせると火が消えますが、これも酸素を断つことによる窒息消火のひとつです。
燃焼物を覆って酸素を遮断する消火剤として、不燃性の泡、二酸化炭素やハロゲン化物のガス、炭酸水素塩やリン酸塩類の粉末が用いられます。

冷却消火のやり方

冷却消火とは、冷却することで熱源を奪い、燃焼している可燃物の温度を、発火点より低く下げて消火する方法です。
例えば、たばこを水に浸けて消火する、木造住宅の火災に消防隊が放水して消火するなどが、これにあたります。

抑制消火のやり方

抑制消火とは、可燃性物質、酸素、温度(燃)の連鎖反応を断ち切って消火する方法です。
粉末消火器によって酸化反応を断つ抑制消火、ハロゲンによる酸化反応を断つ抑制消火などが挙げられます。

工場で火災が発生する原因と火災への対応方法

火災は、何が燃えているのかで、普通(一般)火災、油火災、電気火災、金属火災、ガス火災の5つの種類があり、消化にも4つの要素があることがわかりました。
では、工場では、どんな火災が起こりやすいのでしょうか?

消防庁のデータによると、工場火災の約8割が、作業場や工場部分で発生していることがわかります。
発火原因として多いものは、金属の溶接に関わるもの、配線の接続不良や電気機器によるものです。

金属の溶接に関わる火災

金属の溶接や溶断工事、耐熱ウレタンの吹付中に火花が飛び散って、周辺の可燃性物質に引火し、火災が発生する場合があります。
工場で起こりやすい火災の原因であり、火花を伴う作業がある工場、また工場内で行われる火花が発生する工事にも注意が必要です。

火花対策としては、
常に防炎シートを常備、設置する。
火花飛散後に残火の消火確認を十分に行う。
可能な場合は水の散布を行う。
などが有効です。

配線や電気機器に関わる火災

溶接に次いで多い工場火災の原因に、漏電火災やトラッキング火災があります。

  • 漏電火災とは

漏電火災は、漏電により電気が流れ出た箇所や、その周囲の可燃物が炭化〜蓄熱で発火します。
トラッキング火災は、差しっぱなしのコンセントと電源プラグの間に溜まった埃、埃に加わる湿気によって、電源プラグの刃の間で火花放電が繰り返されることで起こる火災です。

  • トラッキング火災とは

トラッキング火災は、たとえ電気製品の電源が入っていなくても、コンセントにプラグが差さっているだけで発生する現象です。

漏電も、トラッキングも、気がつかないうちに起きてしまう現象で、発生した場合には大きな火災につながる場合があります。定期的な点検や、メンテナンス、清掃が有効な対策方法です。

この他にも、たばこの火の不始末や、ストーブの消し忘れなどのヒューマンエラーをはじめ、工場火災の原因は数多くあります。火災についての知識を持ち、常に火災の危険があることを、従業員ひとりひとりが自覚して業務にあたる事が、大きな火事を起こさない最も需要な対策と言えるでしょう。

万が一火災がおきてしまった場合の備えは万全に

火災や災害の発生時には、人が一斉に逃げだしたり、右往左往するような混乱状態になります。人はパニックになると、正常な判断や行動ができなくなります。避難時に非常ドアが開けられなくなると、多くの人が逃げ遅れ、死亡者が出てしまう可能性もあります。緊急避難時の逃げ遅れを防ぐドア自動閉鎖機能付き防火扉用など、従業員の生命を守る対策を行い、もし火災にあったとしても被害を最小限に抑えるような備えを考えておきましょう。

まとめ
・ ものが燃えるには、可燃性物質・酸素・温度(熱源)が必要
・ 火災の種類は、何が燃えているのかで、A~D火災とガス火災に分けられる
・ A火災は普通の可燃物が燃えた事で起こる火災で普通火災/一般火災という
・ B火災は可燃性の油が燃えた事で起こる火災で油火災という
・ C火災は電気設備が発火燃焼して起こる火災で電気火災という
・ D火災は金属が燃えた事で起こる火災で電気火災という
・ 燃焼を止めるには、「燃焼の3要素」の、全てか一部を取り除く必要がある
・ 消火の要素として除去、窒息、冷却、抑制があり、火災の状況によって消火の方法も異なる。
・ 工場火災の発火原因として、金属の溶接に関わるもの、配線の接続不良や電気機器によるものが多い。