※2021年12月2日に公開した記事ですが、リライト記事に必要な文言等を追記、その他の部分も修正して2023年7月7日に再度公開しました。
工場や倉庫で発生する労災の代表的な原因に、フォークリフトに関わる事故があります。
フォークリフトは大変便利な反面、予期せぬトラブルや命に関わる重大な事故を引き起こす可能性を持った特殊車両です。
工場や倉庫のフォークリフトによる労働災害を事前に防ぐためには、基本的なルールの徹底、過去の事故分析による防止対策の更新など、総合的な安全対策が求められます。
今回は、フォークリフトの事故について、死亡事故を含む実際の事例や発生件数を参考にしながら、工場や倉庫におけるフォークリフトの安全対策について考えます。
最新_フォークリフトの事故発生件数
まずは、フォークリフトによる労働災害事故の発生件数推移を見てみましょう。
厚生労働省労働災害統計によると、事故発生件数が2000件を超えた2011年以降、若干ではありますが、減少傾向にありました。
2018年~19年に再び2000件代に事故発生件数は上昇するも、死亡件数では2019年に過去最小(2015年以降)となっています。
2020年、死亡事故件数が3年ぶりに大幅な増加となりましたが、2021年、死亡事故は大幅に減少し、2019年水準まで下がりました。ただし、死傷事故は微増しています。
約15万件(2000年)の労働災害発生件数全体からみると、フォークリフトによる労災発生件数は2割にも満たない数値ですが、特に製造業や倉庫業においては、この死亡件数増加は見過ごせない事実です。
出展:一般社団法人日本産業車両協会 フォークリフト事故統計の紹介
また、厚生労働省 平成29年事故型別起因物別労働災害発生状況の統計から、荷役運搬機械による労働災害の内訳を見てみると、フォークリフトによる事故の割合が70%と、圧倒的に多いことがわかっています。
よくあるフォークリフト事故
フォークリフトによる事故で多いものは次の4つです。
- 墜落や転落
- はさまれ・巻き込まれ
- 作業者への激突
- 転倒
それぞれのケースを見ていきましょう。
1. 転落・墜落による事故
転落や墜落は、フォークリフトによる労働災害で最も深刻な事故のひとつです。
フォークリフト作業中の作業員が、フォークリフトごと墜落・転落したり、荷台から墜落・転落したりする事故をいいます。
また、フォークリフトの爪の部分に人を乗せて作業を行うなど、本来なら禁止されている危険行為を行った際に発生した転落事故も過去に報告されてます。
《 転落・墜落事故の事例 》
被災者は、幅員約3mの直線の未舗装路を、空荷の状態でフォークリフト(積載重量1.5t)を走行中、路肩から約50cm下の畑にフォークリフトごと転落し、フォークリフトのフレームと地面の間に、頭部及び頸部をはさまれた。
2.巻き込み・挟まれによる事故
慣れや漫然運転などで、周囲への安全確認を怠るようになった時などに、起こりやすい事故です。
フォークリフトのマストやヘッドガード、また他の車両との間にはさまれる死亡事故が起きています。
また、目の前の荷物だけに気を取られて、近くに居た作業員を巻き込んでしまうケースも少なくありません。
《 巻き込み・挟まれによる事故の事例 》
被災者は、雨天時、屋内作業場で被災者がトラックへ荷積みを行うため、荷台の扉を開けていた。近くでフォークリフトによる荷物移動を行っていた作業者は、被災者のトラックを視認したものの、人の姿は見えなかったためフォークリフトを後退させた。トラックの荷台の側にいた被災者はフォークリフトとトラックの間に挟まれて死亡した。
3.作業者への衝突事故
フォークリフトと、場内の作業者が激突して起こる事故をいいます。
安全確認を怠るなど不注意だけでなく、車両の点検ミスや整備不良から起こる可能性もあります。
例えば、フォークリフトの走行経路に立ち入った作業員が、車両に轢かれてしまうケースや、付近の作業員の上に荷物が落下するなどもあります。
《 衝突事故の事例 》
フォークリフトでパレットの移動作業をしていた作業者が、パレットを前方が見えなくなる程高く積み前進走行していた時、歩行中の被災者に気づかず後方から接触した。その時、パレットの最下段に被災者の両足首が当たり負傷させた。
4.転倒事故
フォークリフトの転倒や横転によって、運転者が全身を強打したり、車両の下敷きになってしまう事故です。
荷物の積み下ろし中にトラックが動き出したり、スピードを出し過ぎによってバランスを崩したり、荷物を高く持ち上げたままでの悪路移動などで起こりやすい事故です。
《 転倒事故の事例 》
工場内にて、荷物なしでフォークリフトを運転し、坂道を下っていた際、坂道の先に大型トラックが停まっていたため、ハンドルをきったところ、ハンドルを切りすぎてしまい、勢い余ってフォークリフトが転倒し、骨折した。
フォークリフト事故の5つの原因
多くのフォークリフト事故の事例から、主な原因を見てみましょう。
1.運転操作のミス
一般的な乗用車と同じく、運転操作を誤ることが事故原因となります。
ハンドル操作やレバー操作の誤り、アクセルとブレーキの踏み間違いは、よくある誤操作です。
また、前方不注意や急発進など、「これくらいは大丈夫」「いつもやっている」など、慣れや惰性も、誤操作を招く原因になります。
免許を取得した後も、繰り返し正しい運転技術を意識することが大切です。
2.安全確認を怠る
フォークリフトの免許取得時における現場講習に「指さし確認」がありますが、実践では行われないケースが多い動作が「安全確認」です。
前後左右の確認をせず走行した場合に、他者を巻き込むといった事故が多発しています。
また、シートベルトの着用を怠れば、転倒時に投げ出される危険があり、命を落とすこともあります。
3.フォークリフトの点検および整備不足
点検、メンテナンスや整備などを実施せずに長期間放置すれば、故障する原因になるだけではなく、荷役装置や走行装置が正しく作動しなくなるなど、重大な事故の原因にもなります。
フォークリフトから異音がする、機体から悪臭がある、運転時に違和感があるなどの場合は、直ちにメンテナンスや修理が必要です。
4.危険なパレットの積み方
作業効率を優先するあまり、パレットの重量や数を考慮せず、許容量を超える詰み方をしたために、大きな事故が起こる事があります。
許容を超えた荷物を一気に持ち上げたことで、バランスを崩して転倒したり、荷物が人を直撃して死傷事故が起こります。
正しい手順と積載規定量の厳守は、安全に作業を行うための基本です。
5.フォークリフトの作業範囲が定まっていない
フォークリフトが作業するエリアと、人が立ち入るエリアをハッキリ分けていない場合に、事故の発生率が高まります。
フォークリフトと人の作業範囲を明確に定めて、分かりやすく表示し、行動規範を設けてそれを徹底することで、運転者も他の作業者も安全に業務を行うことができます。
すぐに取り組みたいフォークリフトの安全対策
悲惨な死亡事故などの労働災害を防ぎ、効率良く作業するためにも、基本的な安全対策を行う必要があります。
ここでは、一般的なフォークリフトの安全対策をご紹介します。
フォークリフトと人の通路を分ける
工場や倉庫内を「フォークリフトが走行するエリア」と「人が立ち入る場所」に分けます。テープを貼る、目標を掲げるなどで、人とフォークリフトの接触を防ぎます。
フォークリフト走行経路への侵入防止
死角の多い場内、入り組んだ通路での事故防止には、近くに回転式の蛍光灯を設置するなど、作業中であることが分かるようにして、他の作業員への注意を促します。
指差し確認・呼称確認の徹底
指差し確認や呼称確認を徹底により、フォークリフト乗車前に、車体の異常や不具合を発見することもできます。
安全運転と安全な荷積の徹底
正しい操作と乗車方法、操作方法を日々確認し、決して油断をしないようにしましょう。
シートベルト着用、低速走行などの安全運転を徹底する、用途外に使用しない、積載量を守る事などは基本中の基本。
慣れているから大丈夫といった気持ちと、何気ない緩慢運転が事故を招きます。
危険予知のトレーニング
フォークリフトでは、走行経路に人がくるかもしれない、軽い荷物でも固定しないとバランスを崩すかも知れない、といったリスク回避の考え方を持つようにしましょう。
安全対策システムを導入する
フォークリフトなどの接近を感知して知らせるシステムや、衝突防止ミラー、専用ドライブレコーダーなど、専用の機器や設備を導入することも安全対策として有効です。
まとめ
- フォークリフトの死傷事故は微かに増減を繰り返しつつも大きくは減少していない。
- フォークリフトの事故は主に「墜落・転落」「はさまれ・巻き込まれ」「作業者への激突」「転倒」である。
- フォークリフト事故の主な原因は、運転者の操作ミスをはじめ、安全確認や環境整備の不足、整備不良、作業ルールの不徹底などがある。
- 基本的な運用ルールの徹底や、従業員の安全意識向上などが、フォークリフトの安全対策として有効である。
今回は、フォークリフトの安全対策について、実際に多い事故のケースや原因をクローズアップしてきました。
フォークリフト事故の発生は、労働災害全体からすれば低い割合ですが、ひとたび起こると重大な怪我や破損、死亡事故につながることから、厚生労働省も事故件数の減少に向けた注意喚起を呼びかけています。
安定した事業継続のためにも、今一度フォークリフトの安全対策を見直す必要がありそうです。
解決ファクトリーでは、安全なフォークリフト運用に役立つ製品ご提案しています。
まずはお気軽にご相談ください。