【防火対策】もしもの工場火災で被害を最小限に抑える3つの訓練とは?

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2022年2月11日の深夜、大手米菓製造工場で大規模な火災が発生しました。

消火に当たった消防本部によると、通報から鎮火までに11時間半を要したこの火災、建物内には黒煙が充満して突入できない状況が続いたこと、機械が多かったことなどから消火活動は困難を極めたそうです。
救助活動も虚しく6人の尊い命が失われ、近隣地域および業界全体に衝撃が走りました。

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避難訓練の重要性を再確認

工場をはじめ倉庫など企業の事業所では、災害発生を想定した定期的な避難訓練を実施していると思います。
なぜなら、消防法第8条で「多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるもの」に対して義務付けられているからです。

消防法では防火対象物の用途によって特定用途か非特定用途に分類されますが、企業の事業所は「非特定用途防火対象物」にあたり、防火管理者を指定してその者の指示で消防計画を作成し、管轄の消防署に届け出を行う必要があります。
その消防計画では指定した回数の避難訓練を行うことが義務付けられており、「年1回以上の消火、通報及び避難の訓練」を実施しなければならないとされます。

ところが、マンネリ化や情報更新がされていない、イレギュラーに対応できないなど、法令を遵守しているつもりでも、火災や自然災害など、いざという時に機能しないケースも少なくありません。

訓練していたことはできますが、訓練していないことはできません。
起きてからでは遅い火災などの災害に備えて、平時から避難訓練を徹底しておくことが重要です。

素早い避難が重要!火傷だけじゃない火災の死亡原因

避難訓練の重要性を再確認したところで、工場や倉庫で最も気をつけたい「火災」における人的被害についてお話しします。

総務省消防庁の令和元年版 消防白書によると、火災による死者の状況で「死因」について最も多いのは火傷で、次いで一酸化炭素中毒・窒息が多いと報告されています

令和元年版 消防白書 より

(2)火災による死者の状況
イ 死因は火傷、次いで一酸化炭素中毒・窒息が多い
死因は、火傷が最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息となっている。
死亡に至った経過をみると、死者数(放火自殺者等を除く。)のうち、逃げ遅れが全体の49.4%を占めている。その中でも「避難行動を起こしているが、逃げ切れなかったと思われるもの(一応自力避難したが、避難中火傷、ガス吸引し病院等で死亡した場合を含む。)。」が最も多く、全体の17.3%を占めている。

火災による経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)

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出典:「令和元年版 消防白書」(消防庁)(https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r1/chapter1/section1/para1/47626.html)

前出の火災事故では、停電が起こり工場内は暗闇になりました。
死亡した6人のうち4人の女性従業員は玄関近くの防火シャッターの前で倒れていて、煙が充満する中で逃げ遅れた可能性があるとみられています。
また、当該工場では、全ての従業員が避難訓練に参加していなかったことも報じられています。

では、万一このような火災事故で被害を最小限にとどめるためには、工場としてどんな訓練を行っておくべきなのでしょうか?

次の項目では、鎮火に至るまでに約12日間という長時間を要した、埼玉県三芳町で起きた倉庫火災(平成29年2月16日発生)を教訓に、3つのポイントを見ていきましょう。

ポイント1 |通報訓練
火災発見時は直ちに適切な通報を

【倉庫火災での教訓】

火災発見者は自ら初期消火を試みたものの、自動火災報知設備が鳴ってから約7分が経過するまで、119番通報が行われませんでした。
事業所の消防訓練では、消火器を用いた消火訓練・避難訓練は定期的に行われていましたが、通報訓練は行われていませんでした。

【倉庫や工場における火災時の適切な通報とは】

火災の発生場所や燃焼物などを具体的に想定して、ロールプレイング形式の模擬的な通報訓練を行い、火災発見時には躊躇することなく直ちに適切な119番通報を行うことができるようにすることが必要です。

ポイント2 |消火訓練
屋内消火栓設備又は屋外消火栓設備を用いた確実な初期消火

【倉庫火災での教訓】

事業所では消火器だけでは初期消火することができず、屋外消火栓設備による消火を試みました。しかしポンプの起動操作が行われておらず、初期消火に必要な放水量が得られませんでした。
事業所の消火訓練においては、消火器を使用した訓練は実施していましたが、屋内消火栓設備や屋外消火栓設備を使用した訓練は行われていませんでした。

【倉庫や工場における火災時の確実な初期消火とは】

大量の段ボール等の可燃物があるところでは、延焼が速いため消火器だけでは消火できない場合がありますが、屋内消火栓設備や屋外消火栓設備は消火能力が高く初期消火に有効ですので、これらを使って実際に放水する訓練が必要です。

ポイント3 |避難訓練
従業員全員が円滑に避難できることを確認する避難訓練

【倉庫火災での教訓】

大規模倉庫の中は、コンベヤ等があるため避難ルートが長く複雑になっている場合がありますが、建築時は、これらが置かれていない状態を前提として設計され、避難安全検証法によるシミュレーションを行った結果に応じて、避難経路となる階段の数を減らしている場合があります。
さらに、火災時は濃煙が立ちこめ、停電で暗い状態※となります。そして、防火シャッターが閉鎖している中を、くぐり戸を介しての避難となるため、避難が極めて困難になります。

【大規模倉庫や工場特有の避難の難しさとは】

今回の火災(H29年に埼玉県三芳町で起きた倉庫火災)において逃げ遅れた人はいませんでしたが、実際に棚やコンベヤ等が配置された状態で、防火シャッターが閉鎖するなど火災が発生した場合の具体的な状況を想定し、火災時に危険な状態になるまでの時間内(建物設計時に避難安全検証法を用いている場合は、煙降下時間とされる時間内)に、従業員全員が避難できるように避難訓練を実施しましょう

【ここをチェック】

避難訓練の結果、避難に時間がかかるようであれば、速やかに避難できる対策(避難経路の見直し等)を考えましょう。

【アドバイス】

  • 防火シャッターの下に物品を置かないようにしましょう。
  • 感知器と防火シャッターが連動して正常に動くか確認しましょう。

ここまで「大規模倉庫における火災の教訓」(消防庁)
https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/item/prevention001_07_leaflet.pdf  を加工して作成

まとめ

  • 企業における「避難訓練」の実施は法律(消防法第8条)により義務付けられている。
  • 避難訓練は、全ての従業員に対して行わなければならない。
  • 火災による死者の状況で「死因」について最も多いのは火傷で、次いで一酸化炭素中毒・窒息が多い。
  • 工場や倉庫における大規模火災に備える訓練として、避難訓練の他に通報訓練、消火訓練がある。

今回は、実際に発生し死亡者を出した工場の大規模火災、鎮火までに12日間を要した倉庫の大規模火災から、現場で必要な避難訓練についてお伝えしました。
避難訓練と同時に、工場や倉庫では、危険要素の排除や機器類のチェック、設備のメンテナンスが必要になってきます。
延焼を食い止める防火扉が避難の妨げになって、停電などによるパニック状態では非常扉が見つけられず、結果として逃げ遅れて命を落とすこともあります。

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